すでに自国生産だけでは食糧供給ができなくなったアメリカ
アメリカというと、食糧の大規模な生産国であり、一大輸出国だという認識があったのですが、
「今では完全な食糧輸入国になっている」
ことを報道で知りました。
しかも、大幅な輸入の超過となっており、今やアメリカも他国に食糧を頼らなければならなくなっているようです。
以下は、アメリカの農業貿易の黒字あるいは赤字の推移で、2023年から大幅な農業貿易赤字(輸出より輸入のほうが多い状態)となっていることがわかります。
米国の農業貿易収支の推移 (2025年は推定)
zerohedge.com
アメリカ農務省は、2025年の農業貿易赤字が、日本円で 7兆3000億円規模になると推定しています。
なぜアメリカがこんなことになってしまったのか、具体的な原因は不明ですが、日本も含めて、現在、農業生産者に大変に厳しい状況が続いている中で、「どの国も食糧輸入国となりつつある」という感じになっているのでしょうか。
問題は、3月4日から、トランプ政権がカナダとメキシコに 25%の関税、そして、中国には 10%の関税をかけることです。
平たくいえば、これで「アメリカの食品価格がまた上がる」ことになるわけですが、アメリカは、特にカナダとメキシコからの食糧輸入に多く頼っています。
たとえば、以下は一部ですが、果物と野菜の輸入では、メキシコ ()が圧倒しています。メキシコの国旗が添えられているのが、メキシコからの輸入が多くを占めているものです。
以下は、穀物の輸入で、こちらはカナダ()が圧倒しています。
これらの食料価格は、関税措置により「これから確実に上昇する」ことになります。
正直、この関税措置がアメリカ人にとって何の役に立つのかわからないですが、富裕層以外の人たちは今後さらに厳しい財政に見舞われることになりそうです。
アメリカの農業貿易赤字についての報道です。
国内の食糧供給を国家統治の手段として利用するアメリカが圧力に直面している
America Using Domestic Food Supplies As Statecraft Tool Faces Pressures
zerohedge.com 2025/03/04
3月4日は関税の最終段階となり、トランプ大統領はメキシコ、カナダ、中国に関税を課す予定だ。米国の農産物輸入が過去最高水準に達し、輸出をはるかに上回ったタイミングでの導入となる。
この新たな関税は輸入食品の価格を上昇させる恐れがあり、消費者心理に重くのしかかり、資金難の世帯に圧力をかける可能性がある。
アメリカ農務省は先週の貿易見通し報告書で、今年の米国の農業貿易赤字が過去最高を記録し、約 490億ドル (約 7兆3000億円)に達する可能性があると警告した。
一方、米国は世界の主要農業市場でシェアを失い続けている。言い換えれば、輸出は減少している一方で、記録的な量の食糧が米国に輸入されているということになる。
ブルームバーグはレポートで 「かつては豊富な食糧供給を政治の手段として利用していた国にとって、これは大きな転換であり、米国は今後、永続的な農業貿易赤字に直面する」と述べた。
農産物貿易赤字の転換点は 2019年に始まったが、バイデン・ハリス政権下で爆発的に増加し、トランプ大統領の 2期目も続くだろう。
トランプ大統領の関税措置は 3月4日に発効し、カナダとメキシコからのすべての輸入品に 25%の関税を課す(中国には 10%)。
この措置により、アボカドからコーヒー、ココア、砂糖、牛肉、オレンジジュース、卵、その他これらの国からの輸入農産物の価格が上昇し、資金難の消費者たちにさらなる負担がかかる可能性がある。
同時に、中国国営メディアの環球時報は、4日の次の関税措置により、中国が米国の農産物輸出に対抗措置を講じる可能性があると警告した。
もし発動されれば、米国は最大の農産物市場の一つで引き続き損失を被ることになるだろう。
ブルームバーグは、2019年、2020年、2023年、2024年以外の年間赤字は 1960年の数年前にのみ発生したと指摘した。
アメリカが世界最大の農産物輸出国の地位を維持する能力は衰えつつあるようだが、これは多極化が進む世界において、食糧を国家運営の手段として利用する能力もまた衰えつつあることを示しているということかもしれない。