湾岸諸国の多くは海水を淡水化して利用している
イランがホルムズ海峡を封鎖して、まだ 1週間も経っていないのですけれど、影響は甚大になっています。カタールでは LNG 生産が停止され、海上輸送料金も 650%の上昇を見せており、事実上、中東からのエネルギーの運搬は完全に停止しています。
そして何より、中東の湾岸諸国には食糧の自給という概念がなく(砂漠なので自給しようがない)、ほとんどの食糧を輸入に頼っているのですが、「それらの食糧もホルムズ海峡を通ってやって来る」のです。それも現在止まっているようです。食糧の場合、不足が持続すると大きな人道上の問題も発生しかねません。
・自国の食糧生産がほとんどないペルシャ湾岸諸国への食糧輸送が停止中
BDW 2026年3月6日
たった 1週間でこんな混乱が起きるとなると、今後も戦争が続いていくと、世界はどうなってしまうのかと思いますが、今度は、
「ペルシャ湾でタンカーが大爆発を起こし、原油の流出が発生した」
ことが、英国海上貿易局(UKMTO)によって報告されています。
UKMTO のページを見ますと、ホルムズ海峡周辺では、船舶への攻撃がかなり起きていることがわかります。
下のマップのうち、赤い目印が、船舶が攻撃を受けた海域です。
これらの湾岸諸国には、基本的に自然の淡水がほとんどないですので、海水を淡水化して生活水として利用している場合が多いのですが、そこに原油が入り込むと、飲料水としても生活水としても使用できなくなる可能性があります。
また、海の生物への環境汚染の問題も出てくると思うのですが、通常ならば、清浄作業などで原油を取り除いたりするのですけれど、今この海域には、どんな船も近づけないですので、清浄作業を行うことは非常に難しいと思われます。
大きな環境災害になりかねない事件ですが、今後も同じようなことが同じような海域で起きないとも限りません。以下、報道をご紹介します。
クウェート沖でタンカーが「大爆発」、原油流出発生
Tanker Hit By "Large Explosion" In Waters Off Kuwait, Causing Oil Spill
zerohedge.com 2026/03/05
ペルシャ湾における船舶の安全確保を巡る事態はこれまでで最も劇的な激化を見せている。
高リスク地域における船舶の安全監視を担当する英国海軍当局、英国海上貿易局(UKMTO)は、協定世界時午後10時40分頃、クウェート沿岸のムバラク・アル・ケビール沖南東 30海里のタンカーで「大規模な爆発」が発生したとの報告を受けたと発表した。
タンカーの爆発があった場所

「貨物タンクから流出した水に油が含まれている」と報告されており、特に湾岸地域の住民の多くを支えている淡水化施設に到達した場合、壊滅的な環境被害を引き起こす可能性がある。
イラクの重質燃料油輸出の重要な積荷港であるコール・アル・ズバイルの荷揚げ区域に停泊していたタンカーは、爆発後、浸水し始めた。 損傷した貨物タンクから周辺海域に油が流出しているのが確認され、環境への影響が懸念された。
甚大な被害にもかかわらず、火災は報告されておらず、乗組員全員の無事が確認された。クウェート内務省はその後、事故は同国の領海外、港から少なくとも 60キロ離れた場所で発生したと明らかにした。
クウェート沖の標的海域は、イラクの主要石油輸出回廊内に位置し、これまで主要な紛争境界線の外側と考えられていた地域であるため、特に重要だ。
米イラン戦争に直接関与していないイラクは、広範囲にわたる混乱による貯蔵不足と積み込みの遅延により、すでに原油生産量を削減している。
今回のクウェートでの事件について、犯行声明を出している団体や国はないが、アナリストたちは、イランの代理勢力やその他の勢力が混乱に乗じている可能性を示唆している。
停泊中のタンカーの船長から得た情報によると、紛争の 5日目が終わりに近づく中、イスラエルと米国が 2月28日土曜日にイランのいくつかの重要拠点を共同攻撃して以来、イランは報復として中東各地の拠点を攻撃し、ホルムズ海峡封鎖の一環として湾内の複数の船舶を攻撃した。
今回の事件は決して孤立したものではなく、中東で拡大する紛争の一環だ。米国とイランの戦闘勃発以来、ペルシャ湾はますます不安定になっており、ここ数日、商船や軍艦への複数の攻撃が報告されている。
例えば、爆発に先立ち、スリランカ沖で米潜水艦がイランのフリゲート艦を沈没させ、バンダル・アッバースでイランのコルベット艦が炎上し、カタールの LNG ターミナルが機能停止に陥った。
これらの出来事により、世界の石油供給の約 20%のボトルネックとなっているホルムズ海峡の沖合で、石油タンカーを含む数百隻の船舶が立ち往生している。
この攻撃はエネルギー市場に直ちに影響を及ぼす。
イラクの輸出が阻害される可能性があり、原油価格は上昇圧力にさらされる可能性がある。さらには、すでに操業停止を織り込んでいる混乱がさらに悪化する可能性がある。
湾岸地域が明確な境界線のない「狩猟場」と化し、事態のさらなるエスカレーションを招く恐れがあるため、海運保険会社や商品取引業者は警戒を強めている。
環境面では、今回の原油流出は、数十年にわたる石油活動による汚染にすでに脆弱なペルシャ湾の海洋生物と沿岸生態系にリスクをもたらす。また、継続的な安全保障上の脅威により、浄化作業は困難を極める可能性がある。


