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タミフルは「その10%は血液脳関門から脳に入る」
インフルエンザの治療薬として日本でも処方されているタミフル (一般名は、オセルタミビル)ですが、その効果は以下のようものとなっています。
オセルタミビル – Wikipedia より
2014年に、コクラン共同計画による完全な治験データの再分析結果が公開され、入院や合併症を減少させるという十分な証拠はなく、成人では発症時間を 7日から 6.3日へと減少させる程度であり、副作用も含めて、使用指針の見直しが必要であると報告された。
なーんと、発症期間が、7日から 6.3日に減少するという、もはや何のための何のものだかよくわからないものなんですが、最近知ったのですけれど、日本では、いっとき、十代への処方は禁止されていたのですが、今はまた処方されているようです。以下は小児科のサイトからです。
タミフルはA型インフルエンザおよびB型インフルエンザに有効な抗ウイルス薬です。粉薬とカプセルがあり、1歳未満のお子さんから使用できます。
発売当初は製薬会社でも在庫切れになるくらい需要がありました。ところが、2006/2007シーズンに見られた異常行動の報道や、厚生労働省の緊急安全情報発出などにより、使用上の注意が厳しくなり、患者さんからも敬遠されるきらいがありました。
一方で、平成19年3月21日未明、厚生労働省から10歳以上の未成年には原則としてインフルエンザ治療薬「タミフル」の使用を差し控える旨、報道発表がありました。その後、平成30年度からは10歳台の人にも再び使用できるようになりました。
そのタミフルに関する論文を最近読みました。
以下にあります。
オセルタミビル投与後の小児集団における神経精神症状
Neuropsychiatric Symptoms in the Pediatric Population After Administration of Oseltamivir
この論文にあるキーポイントに以下のようにありました。
小児科における神経精神症状 キーポイント
• オセルタミビルの神経精神医学的副作用には、せん妄、意識障害、知覚変化、妄想、震え、不安症状、発作障害、睡眠時随伴症、アポクリン腺およびエクリン腺障害が含まれる。
• 純粋なドーパミン作動薬またはオセルタミビルを投与すると、マウスが高さ 20cm のプラットフォームからジャンプする傾向が高まることが研究者たちによって発見された。
• オセルタミビルの 10%が血液脳関門に入り、そこで特定の糖脂質をシアリル化し、D2 受容体 (ドーパミン2型受容体)の活性化を増加させる。 これが他の機序と組み合わさると、興奮と抑制のバランスが乱れ、正味の興奮が引き起こされ、それが異常な行動を引き起こすと考えられている。
• 内側側頭葉の GABA-A (ギャバA受容体)活性の低下によるオセルタミビル誘発性の神経精神症状の疑いのある 1例が、オセルタミビル投与後の集団に見出された。
シアリル化、など単語のわからない部分はありますが、以下のようなことが見出されたようです。
・タミフルの副作用には、神経精神医学的なものが多い
・マウスが高さ 20cmのプラットフォームからジャンプする傾向が高まる
・タミフルは、10%が血液脳関門に入る
・ドーパミン2型受容体の活性化を増加させる
などでしょうか。
このドーパミン2型受容体の「活性化」というのは、統合失調症と関係しているようで、2020年の以下の京都大学などの研究があります。
(論文) 統合失調症に関わるドパミン受容体の構造解明 (京都大学 2020/01/22)
この論文に、
> ドパミン量が、過剰になると統合失調症になると考えられています。
とあり、ドーパミンとは、そういうものであるようですが、タミフルは、そのドーパミンの活性化を増加させるようです。
正味の効果が、「インフルエンザの発症を 7日から 6.3日に減少させる」というものの代償としては、やや大きいものかもしれません。
なお、この論文の概要には、以下のようにあり、タミフルによる精神神経系の有害事象には、「突発性と遅発性がある」のだそうです。
(論文より)
> 神経精神医学的有害事象は、投与後 24時間以内に始まる突然発症と、24時間後に始まる遅発性発症に分けられる。
>
> 突発性有害事象には、感覚の変化、認知障害、異常行動が含まれるが、遅発性有害事象は主に異常行動で構成される。
なかなか作厳しい副作用を持っている薬剤のようですが、ただ気になるのは、「血液脳関門から脳に入った薬剤成分」に、排出される機会はあるのですかね…。
脳には特別な異物排出機能がないように思うのですが。
タミフル投与後に遅発性精神症状を示した 8歳の女の子の事例が論文に掲載されていますので、それを紹介させていただきます。
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論文「オセルタミビル投与後の小児集団における神経精神症状」より
Neuropsychiatric Symptoms in the Pediatric Population After Administration of Oseltamivir
8歳の少女におけるオセルタミビル (タミフル)投与の遅発性精神症状の一例
「サリー」は 8歳の女の子で、過去 2週間、幻聴を訴えており、救急外来を受診した。 幻聴が始まる前に、サリーは経口オセルタミビル (60 mg を 1日 2回、5日間)の飲用を開始し、コースを完了した。
彼女は、 2週間前にインフルエンザAの検査で陽性だった。
オセルタミビルの治療を終えた後、彼女は幻聴を訴え始めた。 彼女は 2種類の声が聞こえることについて述べた。1つは母親の声に似ており、もう 1つは男性の声だという。 サリーはさらにその声について、「私の頭の中で、怒鳴ったり叫んだりしている」と説明した。
サリーは妊娠 39週で帝王切開で生まれた。
彼女は正常な成長経過をたどり、トラウマやネグレクトの報告はない。通常の学校教育を受けており、サリーが幻聴を訴えたのは、これが初めてのことだった。
サリーには過去の精神病歴はない。また、精神病の家族歴もない。彼女は、精神状態検査により、典型的に正常な発達中の 8歳の少女であることが明らかになった。
また、幻聴を訴えたが、視覚的な幻覚は述べていない。 妄想も誘発されていない。また、不安なども訴えていない。
サリーの感情は適度に抑制されており、思考プロセスは論理的で、いくつかの思考ブロックがありました。彼女は時々、内心で夢中になっているように見えた。入院から約 48時間後に、サリーは幻聴を認めなくなり、その後外来で経過観察を行って退院した。