5月下旬、大雪と寒波に襲われたカシミールの高原の村
Kashmir Observer
打撃を受ける遊牧民たちの生活
インドのカシミール地方で、5月の最終週に季節外れの吹雪に見舞われ、農作物や畜産動物に大きな被害が出ていることを現地メディアが報じています。
記事によれば、カシミールだけではないでしょうが、「季節のパターンがメチャクチャになってきている」ようで、
記事に出てきた遊牧民の女性は以下のように述べています。
「もう、かつての気候のパターンがないんです」
これは世界のいろいろな場所で起きていることでもありますが、季節として極端に暑いとか、極端に寒いとか、あるいは、極端に雨が多い、あるいは少ない、というような報道は数多く見ます。
カシミールでは、2023年の5月にも「時期として過去 51年で最低の気温を記録した」ことが報じられていました。
2023年5月9火のインドの報道より
5月の異常な降雪が、ジャンムー & カシミール州とヒマーチャル・プラデーシュ州のいくつかの町を襲い、平均気温は 1951年以来最低の水準となっている。
5月の降雪は、ヒマラヤ山脈の高地では珍しくないが、標高の低い町では珍しい。この傾向は通常より懸念されるようであり、気候危機がそのような異常気象につながると予測されている時期に来ている。
ジャンムー & カシミール州とヒマーチャル・プラデーシュ州のいくつかの町では 5月8日にも降雪が記録され、これらの地域は 5月の夏の異常な寒さの期間に突入し、他のまれな天候の発生がインド全土で記録されている。
ちなみに、カシミールといえば、4月22日に、武装集団が観光客を銃撃して、少なくとも26人が死亡した事件もありました。その後、インドとパキスタンは本格的な戦争の一歩手前まで進むことになりました。
このカシミールっていうのは、北緯 33度が通過する地域なんですね。
カシミールの 5月の大雪についての現地の報道です。
夏の降雪がカシミール高原に苦難をもたらす
Summer Snowfall Brings Hardship to Kashmir Highlands
Kashmir Observer 2025/06/01
異常な暴風雪がカシミール北部の農作物や家畜に壊滅的な被害を与え、遊牧民は孤立し、予期せぬ気候変動の警告となっている。
それはまるでインドの昔話に出てくるような、突然の、静かな、そしてひどくあり得ない雪だった。
5月の最後の週、羊飼いたちがカシミールの高地の牧草地への毎年恒例の旅を始めたちょうどその頃、雪が降り始めたのだ。
マルガン、ワルワン、グレズ、ピア・キ・ガリ、そしてアハルバルの上の斜面では、夏の移動のために作られた道が雪に覆われていた。
ほんの数日で芽吹くはずだったトウモロコシ畑は冷たい土砂に埋もれ、羊とヤギはその場に凍りつき、遊牧民のテントは破れ、寒さのために焚く焚き火の火が勢いよく燃え上がった。
この地方の人たちは、険しい地形と長い冬に慣れているが、この雪が、ひどく間違った時期に降っていることに気づいた。
「私たちは羊の群れと一緒に移動していました」と、クルガム出身のグジャール族の牧畜民、バシル・アフマドさんは語った。
「すると雪が降り始めたのです。すぐ止むだろうと思ったのですが、止みませんでした。一晩で子羊が 10頭も亡くなってしまいました」
カシミールの北部地帯は、常に厳しい地形だった。しかし、本来なら、この地域には一定の季節のリズムがあった。厳しいながらも予測可能な冬、短いながらも豊かな夏。
今回の雪は、そのリズムを崩してしまった。
寒さだけの問題ではない。タイミングが重要だ。山の時計に従って生活するなら、タイミングがすべてだ。
グジャル・バカルワル族やチョパン族のような遊牧民は、季節的な移動によって生き延びている。
毎年春になると、彼らは家畜と共に低地の谷間を離れ、牧草地に仮住まいを構える。それが彼らの仕事であり、生活なのだ。
彼らの羊は市場の糧となり、牛は酪農場を支え、彼ら遊牧民の活動は、端から静かに経済を支えている。
しかし、天候が悪化すると、それができなくなる。
「これは些細な混乱ではありません」と、被害を受けた家族数人を訪問したクルガム出身のベテラン政治家、モハマド・ユスフ・タリガミ氏は語った。
「彼らは作物を失い、家畜を失い、場所によっては、彼らが頼りにしていた季節そのものを失ったのです」
タリガミ氏は、即時の救援と現地調査を求めたが、さらにより深い要求、すなわちあらゆる方面から圧力を受けている生活様式の尊重も求めた。
「彼らは何世代にもわたって自然と共に生きてきた人たちです」とタリガミ氏は言った。「彼らは多くを求めません。ただ放牧地へのアクセス、自由な移動、そして天候の変化に見舞われても忘れられないことだけを求めているのです」
多くの人にとって、その変化はすでに始まっている。
グレズでは、村人たちが素手でトウモロコシの苗木を掘り出し、再び植えようとしていた。
ワルワンでは、子どもたちが炭火で生まれたばかりのヤギの体を包み、温めようとしていた。
アハルバルでは、長老たちが登山を続けるのは危険すぎるかどうかを議論していた。
ショピアン上空でキャンプをしていたチョパン族の女性、ハミーダさんはこう言った。
「もう、かつての(気候の)パターンがないんです」
「去年は雨が長すぎました。今年は雪が早く降りすぎています。次はどうなるんでしょう」
政府はまだ完全な被害報告書を発表していない。道路が狭く、急勾配で、倒木や岩崩れでしばしば通行止めになっている高地の多くには、救援活動は届いていない。
しかし、山では時間が早く流れる。作物は永遠に植え直せないし、失われた動物は戻ってこない。
残るのは、天気よりも大きな何かの真っ只中に巻き込まれたという感覚だ。
雪はいつかは溶ける。だが、夏がもう夏ではなくなるのではないかという不安は消えない。