接種17カ月後の人の脳動脈からスパイクタンパク質が検出
札幌禎心会病院、東京慈恵会医科大学、京都大学医学部などの研究者たちが実施した研究で、
「接種 17カ月経過した後に、43%の人たちの脳動脈でスパイクタンパク質が検出された」
という結果が示された査読済み論文が発表されていました。
調査は、2023年3月から 2024年4月の間に出血性脳卒中を経験した 19人の患者を詳細な組織分析によって行われたものです。
論文筆頭著者は、英語で Nakao Ota と記されていて、「ナカオ」という名前は珍しいなと探してみましたら、札幌禎心会病院 脳神経外科脳卒中センターの太田仲郎(おおた なかお)さんだと思われます。
その論文の概要をご紹介させていただこうと思いますが、脳内に長くスパイクタンパク質が残留(あるいは新規で生産されているのかもしれないですが)することは、以前にも研究で指摘されていまして、以下のような記事でご紹介しています。
・ショッキングなドイツの研究論文:スパイクタンパク質は、骨髄から血管から本体まで「脳のあらゆる部位から検出され」それらは一様に脳組織を破壊していた
In Deep 2023年4月12日
スパイクタンパク質が(脂質ナノ粒子も)脳のバリアである血液脳関門という部位を突破し、脳全体に広がることは、日本でワクチン接種が始まる前の 2021年2月にはわかっていました。こちらの記事の後半で記しています。
なお、今回の論文で気になったのは、
> スパイクタンパク質陽性は女性患者のみで観察された。
とあったことでした。
サンプル数は少ないながらも気になる部分です。
脳動脈におけるSARS-CoV-2スパイクタンパク質の発現:mRNAワクチン接種後の出血性脳卒中への影響
Expression of SARS-CoV-2 spike protein in cerebral Arteries: Implications for hemorrhagic stroke Post-mRNA vaccination
sciencedirect.com 2025
ハイライト
・ワクチン接種を受けた患者の 43.8%でスパイクタンパク質の発現が検出された。
・SARS-CoV-2 スパイクタンパク質はワクチン接種後最大 17 か月まで脳動脈内に残留する。
・スパイクタンパク質は脳動脈の内膜に発現した。
・in situ ハイブリダイゼーションにより、ワクチンおよびウイルス由来のスパイクタンパク質 mRNA が確認された。
(※) in situ ハイブリダイゼーションとは、ウイルス感染、腫瘍など診断に用いられるほか、分子生物学でも細胞や組織中の遺伝子発現を研究する上で重要な方法だそうです。wikipedia.org
・この調査結果は、mRNAワクチンの生体内分布と長期的な安全性に関する懸念を浮き彫りにしている。
概要
背景
BNT162b2(ファイザー)やmRNA-1273(モデルナ)などの SARS-CoV-2 の mRNA ワクチンの迅速な展開は、COVID-19 パンデミックと戦うための重要なツールを提供した。臨床試験では短期的な安全性と有効性が実証されたが、広範囲に使用された後には出血性脳卒中などのまれな有害事象が報告されている。
しかし、mRNAワクチンの長期的な生体内分布と効果はまだ十分に調査されていない。
この研究は、出血性脳卒中患者の脳組織における SARS-CoV-2 スパイクタンパク質の長期的な存在を調査し、mRNA ワクチン接種との潜在的な関連性を検証することを目的とした。
方法
2023年から 2024年にかけての出血性脳卒中症例 19例を遡及的に分析した。
組織サンプルに対して、SARS-CoV-2 スパイクタンパク質およびヌクレオカプシドタンパク質の免疫組織化学染色を実施した。
選択された症例で in situ ハイブリダイゼーションを実施し、スパイクタンパク質発現の起源(ワクチンまたはウイルス感染)を確認した。すべての症例について、ワクチン接種歴と SARS-CoV-2 感染状況を記録した。
結果
スパイクタンパク質の発現はワクチン接種を受けた患者の 43.8%で検出され、ワクチン接種後 17か月まで、主に脳動脈の内膜に局在していた。
活動性炎症性変化は確認されなかったが、スパイクタンパク質陽性血管では CD4 陽性、CD8 陽性、CD68 陽性細胞 (それぞれ免疫系細胞が細胞表面に発現している糖タンパク)の浸潤が観察された。
in situハイブリダイゼーションにより、特定の症例で、スパイクタンパク質をコードするワクチン由来 mRNA と SARS-CoV-2 と、ウイルス由来 mRNA の両方の存在が確認された。
特に、スパイクタンパク質陽性は女性患者のみで観察された(P = 0.015)。
いずれの症例でもヌクレオカプシドタンパク質陽性は見られず、活動性ウイルス感染がないことを裏付けている。
(※ 訳者注) ヌクレオカプシドタンパク質陽性というのは、ワクチンではなく、自然感染由来のスパイクタンパク質に陽性ということで、それが「見られず」ということは、自然感染によるものではないことを示しています。
結論
無症候性の SARS-CoV-2 感染によるスパイクタンパク質発現の可能性を完全に排除することはできないが、この研究では、mRNAワクチン接種後に脳動脈に SARS-CoV-2 スパイクタンパク質が長期間存在することが示された。さらに、スパイク陽性血管では炎症性細胞浸潤が観察された。
これらの知見は、脂質ナノ粒子ベースのワクチンの体内分布と長期的な安全性に関する重大な懸念を引き起こす。
これらの知見を検証し、mRN Aワクチンの包括的な安全性評価を確実にするために、世界的な複製研究が緊急に必要だ。