[追記 11月1日]報道では、この洪水による死者が 158名にのぼり、いくだに数十人の行方不明者がいると報じられています。過去数十年の欧州の自然災害では最大級の被害となるようです。こちらに米ロイターの記事を翻訳しています。
10月30日。洪水後のスペイン・バレンシア。 npr.org
スペイン南部で、10月29日から降り続いた豪雨のために激しい洪水が発生し、特にバレンシアという場所では、鉄砲水により甚大な被害が出ていることが報じられています。
10月30日までの死亡者数は 95人と報告されていますが、各地で取り残されて孤立していたり、まだ本格的な捜索が始まっていないことなどもあり、被害者数はさらに増加する可能性があります。
この洪水は、少なくともスペインにおいては、近代史上最悪となる洪水となるもののようです。
バルコニーから洪水の被害を眺める女性
euronews.com
以下は、洪水に見舞われている様子が撮影された動画です。
Massive floods due to heavy rains in Utiel of Requena, Spain (29.10.2024)pic.twitter.com/3PRw5D832F
— Disaster News (@Top_Disaster) October 29, 2024
被害が大きかったバレンシアは、スペイン最大のオレンジなどの柑橘類の生産地でもあり、被害の規模は明らかになっていないですが、相当な農業被害が出ていることが想定されます。
今年の 10月には、アメリカ最大のオレンジの収穫地であるフロリダ州が、ハリケーン・ミルトンに襲われ、現状では「フロリダ州のオレンジジュースの収穫量が過去100年で最悪の水準になる」とされていました。
スペインの洪水について米ロイターの記事をご紹介いたします。
スペインの洪水で少なくとも95人が死亡、バレンシアで1年分の雨が1日で降る
Spanish floods kill 95 as year of rain falls in a day in Valencia
reuters.com 2024/10/31
・2021年以来、ヨーロッパで最悪の洪水、スペインでは過去最悪の洪水になる可能性
・10月31日にさらなる捜索が行われれば、死者数はさらに増える可能性がある
・道路が閉鎖され、鉄道も停止している
・この嵐は他の地域にも襲いかかる
・オレンジの主要生産地バレンシアの農場が打撃を受ける
スペイン東部バレンシア州を豪雨が襲い、橋や建物が流されるなど、同国近代史で最悪の洪水となり、少なくとも 95人が死亡したと地元当局が 10月30日に明らかにした。
気象学者たちは、29日、バレンシアの一部地域で 8時間の間に 1年分の雨が降り、高速道路で渋滞が発生し、世界有数の柑橘類輸出国であるスペインの柑橘類の 3分の 2を生産する地域で農地が水没したと述べた。
最も被害が大きかった地域の住民は、茶色い水の渦巻く波が通りに溢れ、木々を根こそぎにし、建物から石材の破片を引きずり出す中、人々が車の屋根によじ登っているのを見たと語った。
「川が流れてきたんだ」と、州都で働いているガソリンスタンドの棚で救助を待っていたデニス・フラバティさんは語った。「ドアが引き裂かれ、深さ 2メートルの水に囲まれながら、そこで一夜を過ごしたんだ」
マルガリータ・ロブレス国防相はラジオ局に対し、救助活動を専門とする軍部隊が 31日に最も被害の大きい地域で探知犬を使って泥や瓦礫の捜索を開始すると語った。
犠牲者の数がさらに増える可能性があるかとの質問に対し、彼女は「残念ながら楽観視はしていない」と答えた。チームは移動式遺体安置所 50台を持ち込んだ。
ペドロ・サンチェス首相は、破壊されたインフラを再建することを約束し、テレビ演説で「今この瞬間も愛する人を探している人たちのために、スペイン全体があなたたちとともに泣いています」と述べた。
救急隊がヘリコプターから撮影した映像には、バレンシア市郊外の冠水した畑の間の高速道路で崩落した橋や積み重なった車やトラックの様子が映っていた。
当局によると、洪水の影響でマドリードとバルセロナ行きの列車は運休となり、最も被害の大きい地域では学校やその他の生活に不可欠なサービスが停止された。
欧州最大の電力会社イベルドローラ傘下の電力会社i-DEは、バレンシア州の顧客約 15万人が電力を供給されていないと発表した。
同地域の緊急サービスは住民に対し、あらゆる道路での移動を控え、さらなる公式アドバイスに従うよう求めた。
トゥリス、チバ、ブニョルなどのバレンシア地方の一部では降雨量が 400ミリを超え、州気象局 AEMET は 29日に赤色警報を発令した。翌日には雨が弱まったため警報は黄色に引き下げられた。
南部アンダルシア地方を含む国内の他の地域でも洪水が発生しており、嵐が北東方向に移動するため、今後さらに悪天候が続くと予報官たちは警告している。
スペインで最も犠牲者を出した洪水に
他の地域での 3人を含む死者数は、2021年にドイツで少なくとも 185人が死亡して以来、ヨーロッパの洪水による最悪の犠牲数とみられる。
犠牲者の数は、ピレネー山脈のビエスカスの町の近くで 1996年に起きた洪水の死者 87人を上回っており、スペイン近代史で最悪の犠牲者数となる可能性がある。
1957年、バレンシア市で洪水が発生し、数十人が死亡したため、市中心部の洪水を防ぐためにトゥリア川の新しい流路が建設された。
スペイン最大の農業団体の一つ、アサジャは 29日、農作物に大きな被害が出ると予想していると発表した。
貿易データ提供会社「経済複雑性観測所」によると、スペインは生オレンジと乾燥オレンジの世界最大の輸出国であり、バレンシア農業調査研究所によると、バレンシアは同国の柑橘類生産の約 60%を占めている。
気象学者たちは、地中海の温暖化により水分の蒸発量が増加し、豪雨が激化する上で重要な役割を果たしていると考えている。
「かつては数十年の間隔で発生していたこの種の現象が、現在ではより頻繁に発生し、その破壊力も大きくなっているのです」とスペイン気象協会の会員で州上級気象学者のエルネスト・ロドリゲス・カミーノ氏は語った。