完全に焼失したロサンゼルスの高級住宅地パリセーズ地区
CNN
世界的に進行するスマートシティ化
現在、少なくとも米国においては史上最大の経済的被害を出し続けている火災に見舞われているロサンゼルスでは、いくつかの高級住宅地などが「完全に焼失」したことが衛星画像で確認されています。
14日から 15日頃から、また強風などにより火災が拡大する可能性も報じられていますが、いずれにしても、一部の地域は、部分的な修復ではどうにもならないほど破壊されており、今後は、
「完全な復興」
という話へとなっていきそうですが(完全な鎮火自体まだまだかかりそうではありますけれど)、そこで最近知ったのが、このロサンゼルスという場所は、「 2028年までにスマートシティ化する」という計画が 2020年から立てられていた場所だということでした。
以下は、ロサンゼルスのスマートシティ化の青写真が掲載された 2020年の資料の表紙の一部です。
スマートシティというのは、別の呼び方では「 15分都市」などとも呼ばれているものと同じ概念のものと思われ、たとえば以下のように説明されるものです。
15分都市とは
15分都市とは、生活、仕事、買い物、医療、教育、自己啓発という6つの必須な社会機能に15分以内に徒歩または自転車でアクセスでき、社会生活にとっても地球環境にとっても持続可能となる新しい都市モデルのこと。2020年にパリ市長が都市計画作成に盛り込んだことで注目を集め、コロナ禍の影響でさらに関心が高まった。
要するに、都市に小さなブロックごとに生活圏を設けて、「基本的にその生活圏だけでの生活が推奨される」あるいは「人の長距離の移動を事実上なくしていく」というような概念です。
別の資料を見ますと、この 15分都市の計画は世界でずいぶんと進められているようで、2020年(コロナのパンデミックが始まった直後)の資料には以下のようにあります。
スマートシティ化が提案されている主な都市
gaisokkyo.jp
ロサンゼルスも、15分都市という呼ばれ方はされていないものの、資料には、
> 車がなくても移動しやすい都市を構想している
とあり、事実上の 15分都市化のようです。
2028年はロサンゼルスでオリンピックが行われる年ですけれど、しかし、オリンピックまで、あと「 3年」しかないのですよね。
できるんでしょうか。
ともかく、今回のような大火災においては、「既存の建物やインフラを破壊する」という作業が省かれるので、スマートシティとして復興するのならば、手間が省けることになったのかもしれません。
予算面や、あるいは次期大統領がトランプ氏だということなど不透明な部分は多いにしても、ある程度はスマートシティ化に突き進んでいくのかもしれません。
ロサンゼルスのスマートシティ化計画について報じていた 2021年のテクノロジー系メディアの報道をご紹介します。
ロサンゼルスが2028年のオリンピックまでにスマートシティになる計画について
How Los Angeles Plans to Become a Smarter City by the 2028 Olympics
State Tech 2021/07/29
ロサンゼルス市は、今後 7年間でスマートシティとして発展するというオリンピックレベルの野心を抱いている。
2028年に夏季オリンピックを開催する予定の同市は最近、 オリンピック開催までに、どのように進化し、よりつながりのある公平な都市になるかを示したスマートシティの青写真を発表した。
この計画は 6月にロサンゼルス市議会議員らに公開された。
この計画は、地下鉄、バス、自転車、シャトルバスの統一デジタル決済プラットフォームを通じて、車がなくても移動しやすい都市を構想している。
「倫理的プロアクティブテクノロジー」は、911通報前でも「火災、暴力、またはロサンゼルス住民の健康と安全に対するその他のリスク」を特定するのに役立つ。市は周辺地域全体に「ユビキタスな超高速 5G接続」を展開いる。スマートな道案内キオスクと 1万の公共電気自動車充電ステーションの展開を求めている。
「目標には近いが、かなり積極的な目標を達成するにはまだ遠い」と、ロサンゼルスの CIO テッド・ロス氏は、この計画について語った。
「電気自動車の充電設備を街中に広げるというアイデアは、1年でできるものではありません。しかし、今後 7年以内に、電気自動車を持つ人々を受け入れるための非常に確固たる立場に立つことは間違いありません」
LAのスマートシティ能力を強化する計画
この計画では、インフラデータツールと実践、デジタルサービスとアプリケーション、接続性とデジタルインクルージョン、ガバナンスなど、ロサンゼルスのスマートシティビジョンの 5つの要素が概説されている。
この計画では、それぞれの分野について、特定のプロジェクトの実施に関与する市の部署と、市が設定している戦略的な課題および目標を特定している。
たとえば、インフラにおいては、計画ではスマートシティの状況認識の欠如が課題であると指摘し、「主要な公共設備システムにおける監視、在庫、状況認識が依然として不足しており、その結果、公共設備の停止が増加し、復旧が遅れる可能性がある」と指摘している。
市はまた、新しい光ファイバーインフラ、電気自動車充電インフラ、代替エネルギーソリューションなど、「新たな需要に対応するために、まったく新しい次世代インフラを導入する必要がある」という。
これらの問題に対処するために、ロサンゼルス市は今から 2028年までに達成すべき一連の目標を掲げている。
例えば、市は今年、「 LA 街路照明戦略計画」を策定する予定で、これにはモノのインターネット(IoT / ※ さまざまな「モノ」をインターネットと繋ぐ技術)センサーデバイスの共有、遠隔監視、「所有権と知的財産を維持しながら市全体の新しい街路灯を設計する」戦略が含まれている。
今年は光ファイバーの敷設を奨励し、2023年までに「都市環境を混雑させる冗長な IoT センサーネットワークを回避するためにセンサーの共有使用を詳述する」IoT ポリシーを採用する取り組みも行う。
2024年までに市は 1万台の公共電気自動車充電器を設置する予定で、 2026年までに「公共および民間のスマートインフラを活用するオープンソース IoT 統合プラットフォームのための官民パートナーシップ」を構築する。