猫と人間の奇妙な歴史
ロシアの通信社であるリア通信の記事を読んでいましたら、
「飼い猫の起源」
について書かれたコラムを読みました。
コラムといっても、複数の学術論文を引用したもので、猫の起源について、最新の学説と共に猫たちが人間社会に定着していった歴史を述べているもので、かなりおもしろいものでした。
最近の古代の猫の遺伝子(北アフリカには猫のミイラがたくさんあるのだそう)の解析などによりわかったことは、猫と人間にまつわる、やや暗い歴史で、現在の系統に結びつく猫は、
「古代には、生け贄として神々に捧げられていた」
ものだったのだそうです。
生け贄にされた猫は数百万匹にのぼると推定されているそう。
そして、記事にはこのようにあります。
> 現代の飼い猫はすべて、古代エジプトで特に崇拝され、強力な神と密接な関係があった動物の直系の子孫ということになる。
そういう歴史を経ながら、現在、猫は以下のように、わりと緊張感なく、人間の生活と一体化して生き続けています。
Clapping with his tail pic.twitter.com/efvRDhRlpL
— Why you should have a cat (@ShouldHaveCat) December 18, 2024
それにしても、猫という存在は不思議です。サイズもヒトにとって、ほぼぴったりだし、猫は人間の「空気」を読みますからね。
人間社会に送るべくして送られたという気はしています。
以下は、そのリア通信の記事です。
「何百万匹もの犠牲」 科学者が飼い猫の暗い秘密を解明
"Миллионы жертв". Ученые раскрыли мрачный секрет домашних кошек
ria.ru 2025/05/05
世界の住民のほぼ半数が自宅で少なくとも 1匹の猫を飼っている。しかし、このペットの人気にもかかわらず、その起源は未だに謎のままだ。
新たな研究により秘密のベールが取り除かれ、同時にみんなのお気に入りの動物である猫の奇妙な行動が説明された。
犬よりも優れている
さまざまな推定によれば、世界には 6億から 10億の猫が生息しているとされる。最も多いのは米国の 7410万だ。米国に続いて中国(5310万)とロシア(2310万)が続く。地球上の家庭の約 40%で猫が飼われている。
Cat Population by Country 2025
犬の数も同じくらい、もしくは少し多いくらいだが、しかし、都市化が進んだ国(例えば日本)では、猫の方が一般的だ。猫は都市部のアパートに適しているからだ。
猫は安価で、重要なことに、世話をする必要がはるかに少なく、キプリングの言葉を借りれば、「猫はひとりでに歩く」のだ。そして、猫の顕著な独立心は、実はその起源の歴史に関係しているのかもしれない。
キプロスの獣
猫と人間が共存していた最古の証拠は、2004年にキプロスで発見された。猫の骨格が発見された埋葬地は、紀元前 8千年紀のものだった。
当時、この島には野生の猫はいなかったため、科学者たちはその動物はどこかから持ち込まれたと結論付けた。当時、肥沃な三日月地帯の土地であった中東から新石器時代の革命が起こっていたと推測するのは論理的だ。
人類はまず農業を習得した。食糧が現れ、それとともにネズミが現れ、そしてそのネズミを狩る猫も現れた。
同時に、一部の研究者によれば、人間と猫との関係は、家畜化というよりも共生と呼ぶ方が正確だ。何世紀にもわたって、人々は狩猟、警備、徴兵など、さまざまな作業のために犬を意図的に信頼できる「道具」として使ってきたが、猫は長い間信じられていたように、自力で定住してきた。
そして、彼らは害を及ぼさず、むしろ利益(ネズミを狩る)があったので、小さな捕食動物である猫たちは留まることが許されたのだ。
片利共生という特別な用語がある。
これは、片利共生者(この場合は猫)だけが 2つの種間の関係から利益を得る一方で、その飼い主にとっては概してそのような相互作用に利点も欠点もない状況を表す。
この理論は今日科学界を支配しているが(論文)、2つの新たな研究がこれに異議を唱えている。どちらの論文もまだ査読を受けていないことに注意してほしい。
ナイル川の死
ローマ・トルヴェルガタ大学の古遺伝学者マルコ・デ・マルティーノ氏とその同僚は、ヨーロッパ、アナトリア、北アフリカの考古学遺跡から出土した古代の猫のゲノム 70種を分析した。
その結果、現代のペットであるネコ科の動物「Felis catus (現在の猫の学名)」は中東の集団から来たのではなく、北アフリカの集団から来たものであることが判明した(論文)。
さらに、それらは新石器時代ではなく、数千年後に出現した。他の研究により、これがどこで、どのような状況で起こったのかをより正確に特定することが可能になった。
英エクセター大学の動物考古学者ショーン・ドハティ氏と彼のチームによると、飼い猫の拡散には暗い宗教的慣習が重要な役割を果たしたという。
記事の著者らは、キプロスで発見されたネコは、アフリカのネコよりもヨーロッパの野生のネコに構造が近いことを明らかにした (論文)。
最も古い確実に確認された Felis catus は紀元前 500年に遡り、古代エジプトの小さなミイラだった。
フランスのレンヌ美術館にある猫のミイラ。
実のところ、約 3000年前、猫のミイラはナイル川のほとりで神々に捧げられる最も一般的な犠牲のひとつだった。その結果、人々は他の犠牲動物とともに、特にこの猫を飼育し始めた。
女神の頭
ドハティ氏とその同僚が指摘するように、エジプトの女神バステトは紀元前 3000年紀に初めて記録されているが、当初はライオンの頭で描かれていた。しかし、紀元前 9世紀から 7世紀にかけて、女神バステトはアフリカの野生の猫の頭で描かれることが多くなった。
(参考図)女神バステト
wikipedia.org
この変化は女神への生贄の増加と時を同じくしており、ミイラ化された猫の数は数百万体に上った。
しかし、それでも、さらに多くのものが生き残り、おそらく現代の猫の人口の起源となったと考えられる。
大量繁殖により、人間に対してより友好的で従順な個体が生まれた。その後、飼いならされた子猫は国際貿易で人気の商品となり、世界中に広まったと考えられる。
したがって、この新しい学説の主張が正しければ、現代の飼い猫はすべて、古代エジプトで特に崇拝され、強力な神と密接な関係があった動物の直系の子孫ということになる。
これは猫の行動について多くのことを説明しているようにも思える。