日本で行われた「動き」に関する研究の論文より

nature.com
人間の「動き」に関する宿命
ちょっと面白い研究を知りました。
東京大学とスペインのナバラ大学の研究者たちの研究で、
「人間は本質的に『反時計回り』の動きを好む」
ことがわかったのです。
論文はネイチャー誌に掲載されています。
東京大学のプレスリリースもあり、以下のように書かれています。
東京大学のプレスリリース「反時計回りバイアス」より
…当時東京大学航空宇宙工学科に所属していたプロジェクト准教授のクラウディオ・フェリチアーニ氏はこう語る。
「実験を分析していた際、同僚たちが偶然にも、33回の実験のうち 32回で、被験者が移動したり向きを変えたりする際に、明らかに反時計回りに回転することを好むことに気づいたのです」
「これは全く予想外のことでした。少なくとも本能的には、人がランダムに歩き回る時、全体的な好みを示す兆候はほとんどなく、必要に応じて向きを変えるものだと想像するからです」
「しかし、他の条件がすべて同じであれば、反時計回りに回転する傾向が、時計回りよりも明確に測定可能でした。研究チームはこの理由を理解する必要があり、優れた研究手法では、観察結果を複数の可能性のある原因と照らし合わせて検証し、何が実際に起こっているのかを絞り込むことが求められます。
現時点では、なぜ人々の間でこれほど顕著な反時計回りの偏りが見られるのかは「完全に不明」で、チームはその原因の解明に取り組んでいると書かれています。
たとえば、陸上などでのアスリートは、常にトラックを反時計回りに走るのが普通ですけれど、これは古代ローマなどから続いているものらしく、普通に考えればどちら周りもあっていいと思うのですが(競馬に「右回り」「左回り」というレース区分があるように)、人間の方のレースにはその選択はないです(おそらく)。
それにしても、「人類は反時計回りの動きを好む」なんてこんなことは考えたこともなかったですが、確かに理由は難しそうではあります。
まあ、何らかの「宿命」なんでしょうね。
それがどういう理屈によってかはわからないにしても、その原因をいろいろと考えることは、なかなか楽しいことかもしれません。
この研究を紹介していた科学メディアの記事をご紹介します。
人間は反時計回りに歩く傾向が強いが、科学者たちはその理由を知らない
Humans Have A Strong Tendency To Walk Counterclockwise, But Scientists Have No Idea Why
iflscience.com 2026/06/12
チームはいくつかの可能性のある説明を提示したが、中には突飛な考えもある。

群衆の動きは不可解で、時には個々の集まりというよりも、まるで集合意識を持った超生命体のように振る舞う。上空から遠くから見ると、パターンが見えてきて、大勢の人々が複雑でありながらも予測可能な動きをしているのがわかる。
東京大学とナバラ大学の研究者らは、新たな研究で一連の実験を行い、人間の群衆が反時計回りに移動する奇妙な傾向があることを明らかにした。しかし、その理由は依然として謎に包まれている。
近年、いくつかの研究で、人間は集団で反時計回りに移動する傾向が強いことが示唆されている。この理論が妥当かどうかを検証するため、研究者たちは綿密に設計された一連の実験を行った。それぞれの実験は、人間の集団行動と、なぜ人間が左回りに歩く傾向があるのかという特定の仮説を検証するように工夫されている。
実験
ある実験では、50人の参加者に中庭で特定の目標に向かって移動し、特定の作業を行うよう求め、地上 10メートルの高さに設置されたオーバーヘッドカメラでその様子を観察した。
別の実験では、ドローンによる監視の下、107人のスペインの 10代の若者が校庭を移動する様子を追跡した。
3つ目の実験では、日本の大学生を椅子でいっぱいの狭い教室に入れた。研究者たちは、この行動がどれほど本能的なものかを判断するため、日本の保育園も観察した。最後の実験では、209人の歩行者が大学キャンパス内を移動する際の個々の動きを追跡した。

上空から撮影されたこの画像は、スペインの学校の校庭と、点と線で示された10代の生徒たちの動きを示している。
当時東京大学航空宇宙工学科に所属していたプロジェクト准教授のクラウディオ・フェリチアーニ氏は声明でこう述べた。
「実験を分析していた際、同僚たちは偶然にも、33回の実験のうち 32回で、被験者が動いたり向きを変えたりする際に、反時計回りに回転することを明らかに好むことに気づきました」
「これは全く予想外でした。少なくとも本能的には、人々がランダムに歩き回る時、それぞれの必要性に応じて向きを変えるだけで、全体的な好みはほとんど見られないと思うからです。しかし、他の条件がすべて同じであれば、人々は時計回りよりも反時計回りに向きを変えるという、明確で測定可能な傾向が見られました」
分析では、参加者の文化的背景、グループの規模、性別、利き手(左利きか右利きか)、年齢など、結果に影響を与えうる様々な要因を考慮した。しかし、結果はこれらの要因に関わらず一貫していた。
「これらのことの中で、際立っていたのは、子供は反時計回りの方向に対してより強い偏りを示す傾向があるということだけで、おそらく年齢がその効果の強弱に影響を与えているのでしょう」とフェリチアーニ氏は説明した。
「私たちの研究結果は些細で取るに足らない発見に見えるかもしれませんが、自然界では、移動に関するほとんどの現象において、動物は基本的に方向性を選ばずに歩いています。人間に見られる強い偏りは、生体力学的レベルでの何らかの非対称性を示唆しています」
反時計回り運動の長い歴史
これは、あなたが意識しているかどうかに関わらず、文化の多くの側面に深く根付いている考え方だ。
アスリートは常にトラックを反時計回りに走っていることに気づいたことはあるだろうか?
古代ギリシャのオリンピック選手や古代ローマの戦車競技選手の時代からそうだったと考えられており、歴史上、アスリートが時計回りに走ることを強制された例外的な時期がいくつかあっただけだ。
人間がなぜこのような動きに惹かれるのかは依然として不明だ。研究チームはいくつかの可能性のある説明を提示しているが、中には突飛なものもある。しかし今のところ、謎のままだ。
「目が原因ではないでしょう。なぜなら、被験者の左右の目をパッチで覆ってみても、偏りは依然として残っていたからです。コリオリの力や地球の磁場のような大規模な現象ではないかと尋ねる人もいましたが、これまでのところ、それは考えにくいです」とフェリチアーニ氏は述べた。
