44分ごとに発信され続ける信号
最近は、宇宙に関しての興味深いニュースが多いです。
少し前には、
「見えない巨大な球体」
が、宇宙で発見されたことを以下の記事で取り上げました。
・深宇宙で「見えない巨大な球体」が発見される。それは肉眼でもX線でも赤外線でも観測できない存在で、電波でだけ捕捉できる
地球の記録 2025年5月24日
今回ご紹介するのは、2025年5月28日、つまり昨日、ネイチャー誌に掲載されていた論文を取り上げていたライブサイエンスの記事です。
それは、
「 44分ごとに奇妙な信号を発する謎の宇宙天体」
の発見についてです。
こういうのは、以前も報じられていたことがあり、2022年に「 20分ごとに電波を発信する天体」について報じられていたことがあります。
それでも、なぜ、そのような現象が起きているのか、謎は謎のままです。
それがどんな天体であるのか、あるいは「天体ではないのか」なども含めて、興味のある話ではあります。
ライブサイエンスの記事をご紹介します。
「これまで見たことのないものだ」:天文学者、地球に44分ごとに奇妙な信号を発する謎の物体を発見
'Unlike anything we have seen before': Astronomers discover mysterious object firing strange signals at Earth every 44 minutes
livescience.com 2025/05/28
定期的に電波とX線のパルスを放出しているASKAP J1832-0911は、まったく新しい宇宙物体である可能性がある。
ASKAP J1832-0911を取り囲む空の領域の望遠鏡画像。
天文学者たちは、深宇宙から奇妙な信号を発している謎の物体を発見したが、それが何なのかは全く分かっていない。
「 ASKAP J1832-0911」と名付けられたこの天体は、44分ごとに 2分間連続して電波と X 線のパルスを放出している。
オーストラリアの ASKAP 電波望遠鏡と NASA のチャンドラ X 線天文衛星によって検出されたこの奇妙な繰り返し信号は、現在のところ説明がつかず、この宇宙の謎を解明することで新たな物理学が明らかになる可能性があると、発見した研究者たちは述べている。
研究チームはこの発見を 5月28日、ネイチャー誌に発表した。
「この天体はこれまで見たことのないものです」と、オーストラリア・パースのカーティン大学の天文学者で、本研究の筆頭著者であるアンディ・ワン氏は声明で述べた。
「 ASKAP J1831-0911 はマグネター(強力な磁場を持つ死んだ恒星の中心核)である可能性もあれば、連星系の恒星ペアで、そのうちの 2つのうち 1つが高度に磁化された白色矮星(進化の終焉期にある低質量の恒星)である可能性もあります」
「しかし、これらの理論でさえ、私たちが観測している現象を完全に説明するものではありません」とワン氏は付け加えた。
「この発見は、新たなタイプの物理学、あるいは恒星進化の新たなモデルを示唆している可能性があります」
ASKAP J1832-0911 は長周期トランジェント(長周期電波過渡現象 / LPT)と呼ばれる、宇宙の灯台のように電波ビームを放出する、稀で極端な天体物理学的現象を示している。長周期トランジェントは、2022年に初めて発見され、これまでに 10個の長周期トランジェントが天文学者によってカタログ化されている。
中性子星によって生成され、数秒または数ミリ秒ごとに電波信号を放出する従来のパルサーとは異なり、長周期トランジェントは数分または数時間間隔でパルスを放射する。
これはこれまで不可能と考えられていた周期だ。
そのため、長周期トランジェントの信号の発生原因、そしてどのようにして長く規則的な間隔でオンとオフを繰り返すことができるのかは、天文学者にとって謎となっている。
オーストラリアの ASKAP 望遠鏡で信号を発見した後、研究者たちはチャンドラ X 線望遠鏡(偶然にも同じ空域を観測していた)を用いて、発見したものを再確認した。
チャンドラの観測により ASKAP J1832-0911 の存在が確認され、また X 線で長周期トランジェントが初めて検出された。
「 ASKAP J1832-0911 が X 線を放射していることを発見した時は、まるで干し草の山から針を探すようなものでした」とワン氏は語った。
「 ASKAP 電波望遠鏡は夜空の広い視野を持っていますが、チャンドラは夜空のほんの一部しか観測していません。ですから、チャンドラが同時に同じ範囲の夜空を観測できたのは幸運でした」
天文学者たちは、電波と X 線を同時に放射している長周期トランジェントの検出は、何がその放射を発生させているのかについての貴重な手がかりになると考えている。なぜなら、この天体を説明する理論は、現在、両方のタイプの放射を考慮しなければならないからだ。
パズルをさらに完成させるには、電波望遠鏡と X 線望遠鏡の組み合わせを使った検出をさらに行う必要があると研究者たちは提案している。
「このような天体を一つ発見したことは、さらに多くの天体が存在することを示唆します」と、論文の第二著者でスペインのカタルーニャ宇宙研究所の天体物理学者ナンダ・レア氏は声明で述べた。
「この天体が一時的に X 線を放射する現象の発見は、これらの天体の神秘的な性質に対する新たな知見をもたらしています」