異常な現象 疾病と感染症

「ガソリンに含まれる鉛はアメリカ人の精神疾患の1億5000万件以上の過剰症例とIQの低下と関連している」という新しい調査結果

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nbcnews.com




アメリカの NBC ニュースが、最近の研究を引用して、ガソリンに含まれる鉛が不安症や、うつ病、ADHD などを含む「精神疾患の 1億5000万件以上の過剰症例」と関係している可能性があると報じていました。

論文は以下にあります。

過去75年間の米国人口における小児期の鉛曝露の精神病理への寄与
Contribution of childhood lead exposure to psychopathology in the US population over the past 75 years

私は、ガソリンに鉛が含まれているということ自体知らなかったのですが、これは過去の話であるようです。

有鉛ガソリン - Wikipedia を見ますと、以下のように書かれてあります。

> 有鉛ガソリンは、第二次世界大戦中を含めて1970年代頃まで、自動車の燃料などに広く用いられていた。

> しかし人体に有毒で大気汚染の原因となるため、日本では自動車用レギュラーガソリンが1975年に、自動車用高オクタン価ガソリン(ハイオク)も1987年に完全に無鉛化された。

> 1980年頃まではハイオクガソリン用にアルキル鉛がわずかに使用されていたが、今日ではMTBEなど含酸素系添加剤に完全移行している。

 

1970年代までは、世界的にガソリンには鉛が使われており、その頃の子どもたちに精神疾患が異常に多いということをアメリカにおいて調査した論文であるようです。

日本に関しては、1977年5月に施行された「揮発油等の品質の確保等に関する法律」によって、自動車用の有鉛ガソリンは販売が禁止されたようです。

ということは、それまでの、つまり 1960年代から 1976年頃までは、日本の子どもたちも鉛による精神疾患の影響を大きく受けていたと見られます。(これは調査すればわかることでもあります)

また、その研究論文には、

> 幼少期にガソリン由来の鉛にさらされたアメリカ人の IQ は、約8億2400万ポイント低下したと推定されている。

という記述もあり、これに関しては、「ガソリンに含まれる鉛が米国人口の約半数のIQを低下させた」という 2022年の研究もあります。

1960年代から 1970年代までに、日本でも、当時子どもだった人々の IQ が大きく低下した可能性がありそうです。

というか、車が普及していた世界のすべての国でそうだったのかもしれません。

私も 1960年代の生まれですが、出身が北海道で、当時の北海道の田舎は、まだ自動車がそんなになかったんですよね。車を持っている人のほうがはるかに少ない時代でした。

ともかく、NBC ニュースの報道をご紹介します。





研究によると、ガソリンに含まれる鉛は精神疾患の1億5000万件以上の過剰症例と関連している

Lead in gasoline tied to over 150 million excess cases of mental health disorders, study suggests
NBC 2024/12/05

研究者たちは、1996年に段階的に廃止された有鉛ガソリンの排気ガスにさらされた結果、何世代にもわたって人々に不安、うつ病、 ADHD の症状が生じたことを発見した。

新しい研究によると、子どもの頃にガソリンに含まれる鉛にさらされたことにより、過去 75年間で精神疾患の症例が何百万件も増加したと推定されている。

鉛は1996年に自動車燃料から禁止された。12月4日に「児童心理学・精神医学ジャーナル」に掲載されたこの研究は、1940年から 2015年までの子どもの血中鉛濃度を分析することで、米国における鉛の永続的な影響を調べた。

調査結果によると、子どもの早期発達期に自動車の排気ガスに含まれる鉛にさらされたことが原因で、アメリカ国民は推定 1億5100万件の過剰な精神疾患を経験した

研究によると、この暴露により、何世代にもわたるアメリカ人が、より憂鬱、不安、不注意、または多動になったという。

米デューク大学、フロリダ州立大学、サウスカロライナ医科大学の研究グループは、この暴露によって人々の衝動制御能力も低下し、神経症になりやすくなることも発見した。

研究によると、鉛に関連する精神衛生と性格の違いは、1966年から 1986年の間に生まれた人々で最も顕著だった

このグループのうち、鉛に関連する精神疾患の負担が最も大きかったのは、1966年から 1970年の間に生まれた X 世代で、これは 1960年代半ばから 1970年代半ばの有鉛ガソリンの使用ピークと一致している。

その時代に生まれた人々は「過去に戻ってそれを変えることはできない」と、この研究の共著者でデューク大学とサウスカロライナ医科大学の神経心理学の博士研究員であるアーロン・ルーベン氏は述べた。

「今日の私たちのような研究は、環境から鉛を取り除き、そもそも鉛をそこに置かないようにすることが、これまで私たちが理解していたよりも多くの利益をもたらすというさらなる証拠となります」とルーベン氏は語った。

研究によると、1940年頃と 2015年頃に生まれたグループは鉛への曝露と鉛関連の精神疾患が最も少なかったという。

ガソリンには鉛は含まれていないものの、外国から輸入された一部の玩具、まだ更新されていない水道管、古い家の土や塗料などには鉛がまだ含まれている。(鉛入り塗料は米国では 1978年に禁止された)

アメリカ疾病管理予防センターによると、鉛への曝露に安全なレベルはない。鉛への曝露は脳や神経系、生殖系に害を及ぼすことが知られており、たとえ少量でも発達障害や学習障害につながる。

鉛は特に 6 歳未満の子どもに有害で、脳の発達、学習、神経系、生殖系に影響を及ぼす

12月4日に発表されたこの研究は、血中鉛濃度と過去の鉛曝露量の推定に関するデータを、2019年にニュージーランドの住民約 600人を対象に鉛に曝露した子どもたちを追跡し、30年以上にわたって精神的健康状態を測定した研究を含む過去の研究結果と組み合わせたものだ。

この研究の筆頭著者であるルーベン氏は、この新たな研究は「鉛が害を及ぼすかどうかについて新たな情報を生み出すものではなく、因果関係を証明する研究だとも言えない。私たちは単に既存の証拠を取り上げ、それをアメリカ国民全体に当てはめているだけです」と述べた。

「私たちは被害を過大評価していたとはまったく思っていいません」と彼は付け加えた。

アメリカ精神医学会児童・青少年およびその家族評議会議長のリサ・フォルトゥナ博士はこの研究を称賛した。

「人口の精神衛生問題発症率の上昇と環境や毒素関連の潜在的関連リスクを調べた研究は、あまり見かけません」とフォルトゥナ氏は言う。「この研究は、環境要因の深刻かつ永続的な影響に光を当てています」

この研究は、ルーベン氏と他の研究者たちが、有鉛ガソリンにさらされるとアメリカ人の人口の約半数の IQ が低下することを発見してから数年後に発表された。

その研究では、幼少期にガソリン由来の鉛にさらされたアメリカ人の IQ は、約8億2400万ポイント低下したと推定されている

鉛はもともと、エンジンの性能を向上させるためにガソリンに添加されていた。ガソリンへの鉛の添加が禁止されるずっと前から、鉛の危険性の一部は知られていましたが、鉛への曝露を減らすことは長年、連邦政府の優先事項にはならなかった。

現在、すべての米国の幼児に鉛検査が推奨されており、濃度が高い場合にはキレート療法などの治療法で毒素を除去することができる。

ルーベン氏は、鉛への曝露の予防が人々の安全を守る最善の方法だと語った。

「米国では鉛への曝露を減らすことで多くの良い成果を上げてきました。血中鉛濃度は大幅に低下しましたが、さらに低下する可能性があります」と彼は語った。「米国でどれほどの害をもたらしたかについて歴史から学び、それを今後に活かしていきたいと思います」







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