
赤ビーツジュース。naturalnews.com
一酸化窒素の新たな重要性
私が「一酸化窒素」というものを知ったのは、コロナのパンデミックの渦中でした。
一酸化窒素には、ウイルスなどの病原体を殺す殺菌作用があるのですが、
「その主要な生産場所のひとつが副鼻腔」
つまり、鼻の奥なんです。以下は AI の説明です。
> 副鼻腔は一酸化窒素を生産する重要な器官です。副鼻腔の粘膜で生産された高濃度の一酸化窒素は、鼻腔を通って肺に送り込まれます。 Gemini
そして、一酸化窒素は、鼻呼吸により副鼻腔から生産され、マスクを着用している場合、特に子どもでは口呼吸になりやすいのですが、
「一酸化窒素は口呼吸では生産されない」
のです。
以下の 2020年の記事で書いています。
・マスク社会の悪影響のメカニズムが出揃った感。鼻呼吸の不足による「一酸化窒素の消えた人体」の将来。特に子どもたちの
In Deep 2020年11月2日
一酸化窒素には、殺菌・抗菌・抗ウイルス作用の他にも、
・気道と血管の拡張 (肺の血流量を増やして血液中へ酸素を取り込みやすくする)
・免疫の最適化 (繊毛運動を活性化させて、異物の排出を促す)
などの働きがあり、人体に非常に重要な存在ですが、最近、医学誌 Cell に発表された研究で、
「一酸化窒素が、アルツハイマー病の予防に役立つ必要がある」
ということが書かれていました。理屈は難しいのですが、その研究を取りあげていた記事をご紹介したいと思います。
一酸化窒素は副鼻腔の他にも体内の様々な場所(主に血管の内皮細胞と脳の神経細胞)でも生産されていまして、その生産を促すような生活が良いのではないかという話でもあります。
大ざっぱにいえば、
・有酸素運動
・赤ビーツやホウレンソウなど硝酸塩を豊富に含む食品を摂取する
・口腔内微生物叢を壊さない(強い殺菌性のあるマウスウォッシュ等を使わない)
・睡眠不足や喫煙を避ける
などでしょうか。
ここに加えて、私としては「マスクをなるべく着用しない」という点を入れたいと思います。
なお、以前、「ハミングするだけで、一酸化窒素の排出量が大幅に(8〜20倍)増加する」という研究をご紹介したこともあります。
科学者たちは、一酸化窒素の低い値がアルツハイマー病の進行を加速させる可能性があると述べている
Scientists Say Low Nitric Oxide May Accelerate Alzheimer’s Progression
mindbodygreen.com 2026/06/04
一酸化窒素について、ほとんどの人たちは普段あまり考えないかもしれない。もし話題に上がるとしても、それはアスリートがトレーニング前にビーツジュースを飲む話や、血流や心血管系の健康に関する会話の中くらいだろう。しかし、この小さなガス分子は、体内、特に脳内で驚くべき働きをしていることがわかっている。
血管を拡張させ、血行を促進し、免疫シグナル伝達や細胞間コミュニケーションに影響を与えるのだ。
そして今、新たな研究によると、脳細胞が遺伝子を編集・発現する過程においても、一酸化窒素は驚くほど重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。
Cell 誌に掲載された新しい研究によると、
脳内の一酸化窒素活性の低下は、プラークの蓄積増加や記憶力低下の加速など、アルツハイマー病の悪化と関連していることが明らかになった。
さらに興味深いのは、この研究結果がアルツハイマー病研究における長年の定説に疑問を投げかける点だ。
長年、多くの科学者はアルツハイマー病では一酸化窒素濃度が高すぎるため、それが病態悪化の一因となっていると考えていた。しかし、今回の研究は、実際にはその逆のことが起こっている可能性を示唆している。
一酸化窒素は脳内の遺伝子「編集」の調節を助ける
この研究を理解するには、まず「選択的スプライシング」と呼ばれるプロセスを理解することが役立つ。
遺伝子は、人々が想像するほど固定的なものではない。一つの遺伝子は、細胞に異なるタンパク質の指示を与えるために、複数の方法で編集される可能性がある。
この編集プロセスは選択的スプライシングとして知られており、人間が持つ遺伝子の総数は比較的限られているにもかかわらず、人間の脳の途方もない複雑さを生み出すのに役立っている。
研究者たちは、一酸化窒素が S-ニトロシル化と呼ばれる化学修飾を通して、このスプライシングプロセスを調節するのに役立っていることを発見した。S-ニトロシル化とは、タンパク質の挙動を変化させる化学修飾だ。
特に注目すべきタンパク質が一つあった。
それは、脳機能や神経変性疾患に関わる主要なスプライシング調節因子である PTBP1 である。研究者らは、一酸化窒素が PTBP1 を修飾することで、脳全体における遺伝子発現に影響を与えることを発見した。
一酸化窒素シグナル伝達が低下すると、このシステムが機能不全に陥るように見えた。
重要なことに、マウスモデルとヒトのアルツハイマー病脳の両方において、SNO-PTB と呼ばれるこの一酸化窒素関連修飾のレベルが低下していることが示された。
一酸化窒素レベルの低下は、臨床転帰の悪化、アルツハイマー病の病理学的変化の増大、および神経変性に関与するタウタンパク質に関連する遺伝子スプライシング異常の増加と関連していた。
それは非常に専門的な話に聞こえるかもしれないが、より広い意味での要点はかなり理解しやすい。つまり、健全な一酸化窒素シグナル伝達は、脳細胞が長期にわたってより健全なコミュニケーションとタンパク質調節を維持するのに役立つ可能性があるということだ。
この研究結果は、脳の老化と血管の健康状態との関連性を示している
この研究が重要だと考えられる理由の一つは、これまで別々に議論されてきたアルツハイマー病研究の複数の分野を結びつけている点にある。
アルツハイマー病は、しばしばプラークの蓄積による疾患として捉えられがちだが、しかし現在では、血管の健康状態、血流、内皮機能障害、炎症、代謝状態など、様々な要因が症状が現れるずっと前から認知機能の低下に寄与していることが明らかになっている。
一酸化窒素は、これらのシステムの多くにおいて中心的な役割を担っているのだ。
そして重要なことに、一酸化窒素の産生は加齢とともに自然に低下するが、特に運動不足、心血管系の健康状態の悪化、インスリン抵抗性、喫煙、慢性炎症、睡眠不足などと相まって低下する。
一酸化窒素の生成を自然にサポートする習慣
この研究は、一酸化窒素を増やすことがアルツハイマー病を予防することを証明するものではない。研究はまだ初期段階であり、これらの知見は直接的な治療法を推奨するよりも、脳内のメカニズムを理解することに重点を置いている。
とはいえ、一酸化窒素の生成を促進することが知られている習慣の多くは、すでに心血管の健康、循環、代謝機能、そして全体的な認知機能の健康的な老化と強く結びついている。その中でも特に重要なものには以下のようなものがある。
・定期的な有酸素運動: 運動は、一酸化窒素の生成を自然に促進する最も確実な方法の一つだ。運動中に血流が増加すると、血管からより多くの一酸化窒素が放出され、時間の経過とともに循環と内皮機能の改善に役立つ。筋力トレーニングも、特に筋肉の健康と血管の健康が代謝的に密接に関連しているため、この点で有益であると考えられる。
・硝酸塩を豊富に含む食品の摂取:ビーツ、ほうれん草、ルッコラ、レタス、セロリなどの葉物野菜には、体内で一酸化窒素に変換される天然の硝酸塩が含まれている。野菜を豊富に含む食事が、心血管系や脳の健康増進と一貫して関連付けられている理由の一つはここにある。
口腔内微生物叢のサポート:興味深いことに、硝酸塩から一酸化窒素への変換プロセスの一部は、口の中に生息する細菌によって行われる。一部の研究者は、強力な抗菌性マウスウォッシュを頻繁に使用すると、一酸化窒素の生成に関わる有益な口腔内細菌が阻害され、この経路に悪影響を及ぼすのではないかと懸念している。
・睡眠の質と代謝の健康:睡眠不足、インスリン抵抗性、喫煙、慢性炎症、運動不足はすべて、時間の経過とともに一酸化窒素シグナル伝達の低下と関連している。一方、安定した血糖値、心血管系の健康状態、そしてより健康的な代謝機能は、体全体の一酸化窒素活性をより健康的に維持する傾向がある。
