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イランが過去1世紀で最悪の「水危機」に陥り、首都テヘランの封鎖を宣言

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ほぼ枯渇したイラン首都への水供給源であるアミール・カビール・ダム

2025年6月1日の撮影。 jpost.com




過去1世紀で最悪の状況

少し前まで、イスラエルとの「12日間戦争」で話題になり続けていたイランですが、現在、国土全体が非常に深刻な「水不足」に見舞われており、政府は、7月23日から(暫定的に) 3日間の「首都閉鎖」を宣言したと報じられています。

報道では、以下のように伝えられています。

テヘラン水道局は、首都テヘランの主要ダムの貯水量が過去 1世紀で最低水準にまで急減したと発表した。当局は、前例のない 5年間の干ばつと記録的な低降雨量を主な要因として挙げており、テヘラン州は過去 60年間で最も深刻な水不足に直面している。

jpost.com

もっとも、水不足や水危機は北半球の多くに及んでいまして、特に中東では、いくつかの国が深刻な水危機に陥っています。アフガニスタンでは、「近代史上初めて首都カブールが水不足に陥っている」と報じられていまして、他の中東の国にも水不足が広がっている可能性があります。

特にイランは、常に「戦争勃発」のリスクを抱えつつも(戦争に関しての生産にも大変な量の水や電気が必要です)、イランは現体制の建国以来の水危機の渦中にあります。ご紹介する記事にもありますが、イラン政府の水の管理方法にもかなりの問題があるようです。

イランの水危機に関しての報道です。





イラン、深刻な水危機で首都テヘランを閉鎖

Iran Shuts Down Capital amid Severe Water Crisis
Middle East Forum 2025/07/21


完全に干上がったイランのテヘランの主な水源であるカラジダムCyrus The Great

ここ数日、イラン国民のソーシャルメディアの投稿で繰り返し登場するテーマは「停電」という言葉だ。停電、インターネットの停止、そして今度は断水だ。

現在、首都テヘランでは毎日 3~ 4時間断水しており、これは停電の期間とほぼ同時間となっている。ソーシャルメディアで拡散している動画には、ナシムシャールなどテヘラン南部の貧困地区で、 3日間連続で断水に見舞われた人々が街頭に繰り出している様子が映っている。

ソーシャルプラットフォーム「X」のあるユーザーは、首都テヘランの給水車の列の写真を投稿した。


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「偉大なるキュロス」というニックネームを持つ別のユーザーは、現在は干上がったカラジダム(テヘランの主要な水源)の写真と、イスラム革命以前にダムが満水で人気のレクリエーションエリアだった頃の写真を並べてシェアした。

おそらく、2500年前、干ばつ、敵、嘘という3つの危機(現在、国を暗闇に包み込んでいる 3つの災難)から神の加護を求めた古代ペルシャ王キュロス大王を思い出す価値があるだろう。

他の州の状況は首都テヘランよりもさらに深刻だ。イラン当局が提示した唯一の対応は、人口 2000万人の大都市テヘランを封鎖し、市民に自宅待機または他州への移動を促すことだった。

政府は、電力と水を節約するため、2025年7月23日にテヘランの都市封鎖を宣言した。これは端的に言えば、問題を解決するのではなく、問題を隠蔽しているだけだ。

イランの公式週末は木曜日と金曜日であるため、これは 3日間の都市封鎖を意味する。このような措置が、深刻化する水と電力の危機をどのように緩和するのかは、依然として不透明だ。

およそ 25年前、国連は報告書の中で、今後数十年のうちにイランで水不足と深刻な干ばつが迫っていると警告した。

当時、イラン革命防衛隊は水力発電用の 60基以上のダムを建設するために巨額の予算を受け取っており、イラン当局は穀物を中心とした農業生産の「自給自足」を推進していた。

イランは国際機関や国内専門家からの度重なる警告を無視し、2000年以降、水力発電能力を 6倍に増加させ、12.5ギガワットに増加させた。しかし、貯水池の水不足により、稼働しているのはその 3分の1に過ぎない。

イランの年間水使用量 1000億立方メートルの 90%を農業が消費する中、小麦の自給自足を達成したのはわずか数年間だけだった。現在、イランの輸入の 3分の1(年間 170億ドル相当)は農産物で、中でも穀物が最大のシェアを占めている。

イランでは、農業に年間 800億立方メートルもの水が消費されているが、農業は経済全体のわずか 11%に過ぎない。これは、農業が伝統的な灌漑方法への依存が続いていることが原因だ。

専門家からの数十年にわたる警告の後、イラン政府は今月、ついに首都周辺の農業地帯における伝統的な灌漑を禁止した。しかし、全国で 350万人が農業に従事していることを考えると、このような禁止措置を強制することは事実上不可能だ。公式データによると、水危機の影響で、過去 20年間で農業従事者の数は 150万人減少している。

イランの水危機の主要因の一つが干ばつであることは間違いないが、しかし、水資源管理の不備も、最も重要な根本原因の一つだ。

例えば、ドイツでは家庭排水の 95%が処理され、農業および工業部門で再利用されているが、イランではこの割合は 20%未満だ。つまり、毎年 64億立方メートルもの未処理の排水が井戸や砂漠に投棄され、その過程で地下水源を汚染している。

もう一つの重要な問題は、非効率的な伝統的灌漑によって年間 800億立方メートルもの水が農業で消費されていることだ。政府は農家の灌漑システムの近代化を支援する努力を全く行っていない。

さらに、地下水の過剰利用も大きな懸念事項だ。イランは年間 500億立方メートルから 600億立方メートルの地下水を汲み上げており、これにより、帯水層を枯渇させ、全国の都市で広範囲にわたる地盤沈下を引き起こしている。

無秩序なダム建設により、イランの湿地帯の 45%が干上がり、その一方で、すでに広大な乾燥地帯である同国に毎年 100万ヘクタールの新たな砂漠が加わっている。

水危機の多くの要因は政府の失政に直接結びついている。しかし、電力危機の時と同様に、イランの当局者は再び国民に責任を押し付けている。

これは、イランにおける個人家庭で消費している水使用量が、全体のわずか 6~ 8%でしかないにもかかわらずだ。イランの一人当たりの年間電力消費量も 1,200キロワット時未満だ。比較すると、米国人はイラン人よりも一人当たり 1.5倍の水と、5倍の電力を家庭で消費している。

イラン政権は責任を他所に押し付けたがるかもしれないが、イスラム革命から 46年以上が経過した今、イラン国民も国際社会もそのような言い訳を受け入れることはないだろう。現政権が自らの責任を認め、その無能さを是正しない限り、危機がますます深刻化することは間違いない。







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