論文中のイラストより
sciencedirect.com
理想と現実
最近発表された「農薬による環境汚染」についての論文が記事として取り上げられていました。「畑を超えて:農薬の飛散が生物多様性を脅かす仕組み」というタイトルの論文で、こちらにあります。
簡単にいえば、農薬の散布は、「農薬を使用している場所から何千キロメートルにもわたって気流によって運ばれ、世界的な環境問題を招いている」という内容のものでした。
使用した農薬最大 25%が、大気の流れに乗って数百キロ、数千キロと飛散・拡大し、土壌や河川などに流入しているそうです。
それが微生物から昆虫、鳥類などを含めた広範囲の生存に悪影響を与えていると。
現在、世界中で昆虫の絶滅スピードが「カタストロフ的なレベル」で進行していることも、それと関係しているかもしれません。今のペースのままだと、科学者たちは「 100年以内にすべての昆虫が絶滅しても不思議ではない」とさえ述べています。
地球上の昆虫の減少が「カタストロフ的なレベル」であることが包括的な科学的調査により判明。科学者たちは「100年以内にすべての昆虫が絶滅しても不思議ではない」と発表
まあしかし…。
化学物質の環境中への流入というのは、今や避けられないものともなっていまして、たとえば、人間が使う「薬剤」もまた、日々大量に川などの水システムに流入していることが判明しています。
以下の記事などにあります。
・地球の水は人間の薬により、もはや死につつある…
In Deep 2019年5月16日
・完全絶滅プロトコル : 魚たちが次々と「男性から女性へと変化」しているその原因が判明。そこから気づいた「人間から水循環システムの中へ排出されている薬たちによる皆殺し」
In Deep 2017年7月8日
これは、大気中からではなく、「人間の排泄」によって、水中に大量の薬や、あるいは人間が使う化学物質が入り込んでいるということなのですが、これらは環境から回収できるようなものではありません。もはや地球全体の河川は、薬剤によって汚染されているのです。
数十億人が接種したコロナワクチン後の社会では、さらにそれが進行したはずです。
その中で、殺虫剤や除草剤など農薬も大気中から非常に広く世界中に拡散して広範囲に汚染が進んでいるようです。
……とはいえ、日本を含めて主要国全体で農家の数が減り続けている中、そして、農家の高齢化が進む中で、完全に農薬を使用しない大規模農場の運営は事実上不可能とも思います。
私は月に 1度ですが、無農薬の野菜を箱で購入していまして、その方は、毎月の状況を書いた手紙のコピーを添えてくださるのですが、無農薬栽培では、季節季節の気温や天候により収穫がまったく安定しないのです。
害虫が多い年でも、手作業でそれらを取り除かなければなりません。
すなわち、それを一般の流通にあてはめますと、すべて無農薬にすると「野菜そのものが著しく高価になる」のです。
一般の市民は、ほんの少しの野菜の高騰でもザワめきますが、そんなレベルではない数倍や、それ以上の価格になるはずです。
ですので、理想的には農薬の使用はないほうがいいに決まっていますが、現実の方向を見ますと、特に、日本のように著しく農家の数が少ない上に、高齢化も著しい国で、ある程度安価に野菜を供給するには、農薬の使用しか選択はないのかもしれません。
各種の生物の絶滅を伴う選択ですが……。
ちなみに、農薬という話とは関係ないですが、日本のコメ農家の倒産・廃業は、2024年に過去最多を更新しています。
今後も同じ傾向が続くと見られます。
日本のように、国民が誰も野菜を作りたがらないのに、誰もが安く作物を手にしたいという国の未来には、確実に致命的な食糧危機の風景が広がることになると見られます。
ともかく、ここから農薬についての論文を紹介していた独立系メディアの記事です。
報告書は、農薬の飛散が世界中の生態系に大混乱をもたらしていることを示している
Report shows pesticide drift is wreaking havoc on ecosystems everywhere in the world
naturalnews.com 2025/01/20
概要
・学術誌「Environmental Pollution」誌に掲載された最近のレビュー論文で強調されているように、空気を介した農薬の移動は世界中の生態系に害を与え、食物連鎖を混乱させ、非標的種に害を及ぼしている。
・散布された農薬の最大 25%が空気中に浮遊し、長距離を移動して植物、土壌、水を汚染し、有益な昆虫、鳥、微生物に害を及ぼす。
・農薬は土壌微生物群を破壊し、土壌の肥沃度と作物の健康を低下させるとともに、カリフォルニアで見られるように、小川や水生生態系を汚染する。
・ブラジルの一部など遠隔地でも農薬が検出されており、農薬が長距離を移動し、手つかずの環境にさえ影響を及ぼす可能性があることが実証されている。
・現在のリスク評価では長期的な影響が考慮されておらず、ジカンバ(除草剤)などの有害な農薬は環境や健康へのリスクの証拠があるにもかかわらず使用され続けているため、より厳格で積極的な規制の必要性が浮き彫りになっている。
農薬は長い間、現代農業の礎として称賛されてきたが、現在では生物多様性に対する重大な脅威として暴露されている。学術誌に最近発表されたレビュー論文では、農薬の空気中移動が世界中の生態系に大混乱をもたらしていることが明らかにされている。
南北アメリカからヨーロッパ、アジアに至るまで、ドイツ、ノルウェー、イギリス、ポーランドの研究者たちは警鐘を鳴らしている。
農薬は害虫を殺すだけではなく、食物連鎖全体を混乱させ、標的以外の種に害を与え、生命を維持する生態系そのものを不安定にしている。
農薬が散布されると、化学物質の最大 25%が空気中に漂い、意図した対象から数百、あるいは数千キロも離れた場所まで移動する。この漂流物は空気中に消えるだけでなく、植物、水、土壌に付着して益虫、鳥、その他の野生生物を殺す。
生物多様性は生態系の安定と食糧安全保障の基盤だ
この問題は個々の種にとどまらない。農薬の飛散は捕食者と被食者のバランスを変え、植物の多様性を低下させ、土壌の健康を不安定にすることで、生態系全体を混乱させる。
微生物は特にこれらの化学物質に脆弱だ。農薬が土壌を汚染すると、微生物群集が乱れ、バイオマスの減少、成長阻害、さらにはこれらの小さいながらも重要な生物の呼吸器系障害を引き起こす。その結果は悲惨だ。土壌が肥沃ではなくなり、作物は弱まり、農業システムはより脆弱になる。
水システムも例外ではない。カリフォルニア州で行われた調査では、農薬の飛散により特定の地域の河川の 10%以上が汚染され、水生生物やこれらの水源に依存する地域社会が脅かされていることが判明した。
この問題が世界的に及ぼす影響は驚くべきものだ。ブラジルの農業活動から遠く離れた僻地で農薬が検出され、これらの化学物質が長距離を移動し、最もきれいな環境でさえも汚染する可能性があることを証明している。
証拠が山積しているにもかかわらず、環境保護庁などの規制機関は対応が遅い。現在のリスク評価では、農薬の飛散が生態系や生物多様性に及ぼす長期的かつ累積的な影響が考慮されていない。
農薬は、限られた安全性データに基づいて承認されることが多く、数年後に被害が否定できないと制限または禁止される。この受動的なアプローチは不十分であるだけでなく危険だ。ジカンバのような有害な農薬が、環境や健康へのリスクの証拠があるにもかかわらず、引き続き使用されていることは、これらの化学物質の規制方法にパラダイムシフトが必要であることを強調している。