疾病と感染症

人間の心筋には「自己再生能力」が秘められているかもしれないことを示したスウェーデンの研究

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Karolinska Institutet




パンデミック以来、世界全体で特に若年層の心筋炎が非常に増えていることが示されています。今回の記事は、その決定的な原因は何なのかということを書くものではないですが、参考資料としては、以下のようなグラフもあります。

接種後(すべてのワクチン)の心筋炎の報告数の2010年-2021年までの報告数の推移

OpenVAERS / Myo-Pericarditis

原因はともかくとして、この心筋炎の増加の最大の問題は、

「心筋の細胞は再生されない」

ということがあるためです。

人間の臓器の細胞は、ある程度は再生されていくものですが、心臓だけは再生されないのです。

つまり、一度損傷を受けてしまうと、その損傷をほぼ一生引きずってしまう可能性が高いといえます。

 

最近、スウェーデンのカロリンスカ研究所(カロリンスカ医科大学)が、

「心臓ポンプによる治療を受けた後、心筋の再生力が大幅に増加した」

ということについての論文を発表していました。自然再生とは、やや違うものですが、ともかく「心臓の再生を促す何らかの方法はあるかもしれない」ということなのかもしれません。

もしかすると、心筋に損傷を負った人たちのための何らかの手段が見えてくる可能性もあるのかもしれません。

なお、その論文で「通常での心筋の再生率」を初めて知りました。以下のように書かれています。

論文より

成人の心臓の心筋細胞は再生能力を示し、年間再生率は約 0.5%だ。

Circulation

通常では、「年間 0.5%」しか再生されないのです。これでは、何十年後にも心筋の損傷は残ったままということになり、その間に心筋炎などになってしまう可能性のほうが高そうです。

以前、「心筋炎はワクチン接種後 6ヵ月後でも 80%が回復しない」という研究をご紹介したことがありますが、しかし、年間 0.5%の再生率ですと、6カ月後だと、99%以上が回復していないということにもなりそうです。

ともかく、カロリンスカ研究所のニュースリリースをご紹介します。





人間の心臓には自己修復能力が秘められているかもしれない

The human heart may have a hidden ability to repair itself
Karolinska Institutet 2024/11/21

重度の心不全の後、心臓が新しい細胞を形成して治癒する能力は非常に低い。

しかし、補助的な心臓ポンプによる治療を受けた後、損傷した心臓が新しい筋肉細胞で自己修復する能力は大幅に高まり、健康な心臓よりも高くなる

これは、 医学誌 Circulation に掲載されたカロリンスカ研究所の新しい研究によるものだ。

人間の心臓が筋肉細胞、心筋細胞を再生して自己再生する能力は非常に限られている。しかし、心臓が重度の心不全で損傷した場合、この能力がどうなるかは不明だった。

カロリンスカ研究所の研究者たちは、損傷後の細胞再生率が健康な心臓よりもさらに低いことを発見した。進行した心不全の患者に対する標準治療は、血液の送り出しを助ける外科的に埋め込まれたポンプ、いわゆる左心室補助装置(LVAD)だ。

 

修復メカニズムを始動させる

驚くべきことに、研究者たちは、心臓機能が大幅に改善したこのような心臓ポンプを持つ患者は、健康な心臓よりも 6倍以上の割合で心筋細胞を再生できることを発見した。

「この結果は、心臓自身の修復メカニズムを始動させる隠された鍵があるかもしれないことを示唆しています」と、カロリンスカ研究所細胞分子生物学部門の上級研究員であり、論文の最終著者であるオラフ・バーグマン氏は言う。

しかし、この効果の背後にあるメカニズムはまだ不明であり、それを説明する仮説はまだない。

「難しいです。既存のデータではこの効果を説明することはできませんが、私たちは今後も細胞レベルと分子レベルでこのプロセスを研究していきたいと思っています」とオラフ・バーグマン氏は言う。

この発見は、重篤な心臓疾患の患者に対して、損傷後の心臓の自己修復能力を刺激する新しい治療法を開発する道を開く可能性がある

この治療法により、患者は心臓移植やその他の長期的機械的サポートだけに頼る必要がなくなる。

「これは、心臓発作後の回復を何らかの形で促進できるという希望を与えてくれるものです」とオラフ・バーグマン氏は言う。

 

細胞の年齢を決定する

人体の細胞の年齢を判定し、どの細胞が新しく、どの細胞が古いかを判断するのは一般的に難しい。

しかし、カロリンスカ研究所の幹細胞研究教授、ヨナス・フリセン氏が以前に考案した方法を使用することで、研究グループは心臓の心筋細胞の再生率を数えることに成功した。

この方法は、1963年の核実験禁止以来、大気中、そしてその後、細胞内の放射性炭素の割合が着実に減少しているという事実に基づいている。その後毎年、新しく形成された細胞の放射能は少しずつ減少し、つまり細胞の「年代測定」が可能になった。







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