これまでに、ガザ地区のパレスチナ人36人に1人が殺された
すでに 660日以上続いているガザの戦争(現在は戦争というより一方的なジェノサイド)によるパレスチナ人の死者数が、7月29日に 6万人を超えたことが公式に発表されています。
アルジャジーラ紙によれば、これは、ガザの全人口の 36人に 1人が、この 662日の間に殺害されたか、あるいは飢餓などにより死亡したということになるそうです。
しかし、一方で、米ハーバード大学のデータセットをイスラエルの大学教授が調査した報告書では、
「ガザ地区で 37万人以上のパレスチナ人が行方不明になっている」
こともわかっていて(公式発表での行方不明者は 1万1000人)、実際の死者がどのくらいになるのか、想像もできないほどなのですが、それに加えて、ここに来て、ガザのほぼ全域に及ぶ深刻な飢餓が進行しています。
先ほどの 6万人の死者のうち、少なくとも 147人(そのうち子ども 88人)が、飢餓が直接の原因の死と見られています。
そして、この飢餓による被害は、すでに限界値(しきい値)を超えており、現在の状況のままですと、飢餓による死者が指数関数的に増える可能性があります。
今回ご紹介するアルジャジーラ紙で医師が述べていますが、特に影響を受けるのは赤ちゃんや乳幼児で、この時期の栄養失調は、長期的な成長にも大きな影響を与えるとされています。
ですので、仮に食料問題が解決したとしても(今のところ解決する目処はないのですが)、今後数年、十数年にわたる影響を及ぼし続けることになると見られます。
現代社会で、このようなジェノサイドが普通に行われて、国際社会も、ある意味で容認している、あるいは無関心であることが信じられない感じですが、それだけに今すぐの解決は難しいようです。
アルジャジーラの報道です。
イスラエルのガザ戦争での死者数が6万人を超える
Death toll in Israel’s war on Gaza surpasses 60,000
aljazeera.com 2025/07/29
この悲惨な節目は、ガザ地区で飢餓が続く中、イスラエルが援助を求める人々を攻撃し続け、少なくとも 147人が飢餓に直接起因する死を遂げる中で起きた。

ガザ地区保健省によれば、2023年10月にガザ戦争が勃発して以来、イスラエル軍は少なくとも 6万34人のパレスチナ人を殺害した。
世界的な飢餓監視システムである総合食糧安全保障段階分類(IPC)が新たな報告書で、ガザ地区で「飢餓の最悪のシナリオ」が進行していると警告し、この悲惨な節目の数値は火曜日 (7月29日)に達した。
医療関係者がアルジャジーラ紙に伝えたところによると、不可欠な人道支援物資を届けるための戦闘が「一時停止」されていたにもかかわらず、夜明け以降、援助を求める人 33人を含む少なくとも 83人のパレスチナ人が殺害されたという。
ガザ地区中部デイル・エル・バラーからリポートするアルジャジーラのタレク・アブ・アズーム記者は、イスラエルが爆弾を仕掛けたロボットや戦車、ドローンを使用したと地元当局の報告で明らかにした。住民はここ数週間で最も血なまぐさい夜の一つだったと述べている。
「イスラエルはまだ攻撃の目的を確認していないが、これはイスラエルによる差し迫った地上演習の可能性を示す兆候だ」と彼は述べた。
IPC は報告書の中で、食糧消費が急激に悪化し、3人に 1人が何日も食べ物を口にできない状況にあると指摘した。
「最新データは、ガザ地区の大半で食糧消費が飢餓のしきい値に達しており、ガザ市では急性栄養失調に陥っていることを示している」と報告書は述べた。
「容赦ない紛争、大規模な避難、人道支援へのアクセスの深刻な制限、医療を含む不可欠なサービスの崩壊の中で、この危機は憂慮すべき、そして致命的な転換点に達している」
7月前半から栄養失調が急増し、4月から 7月中旬にかけて 2万人以上の子どもが急性栄養失調の治療のために入院した。そのうち 3,000人以上が重度の栄養失調に陥っている。
イスラエルによるガザ地区への大量虐殺戦争と、3月からの人道封鎖により、パレスチナ自治区は深刻な栄養失調危機に陥り続けており、戦争開始以来、子ども 88人を含む少なくとも 147人が栄養失調で死亡していると、ガザ地区保健省が月曜日に発表した。
飢餓は人口のあらゆる層に影響を及ぼしており、国連女性機関のシマ・バハウス事務局長は、ガザ地区の女性と女児 100万人が飢えるか、食糧を求めて命を危険にさらすかという「考えられない選択」に直面していると語った。
一方、イスラエル軍は、物議を醸している米国が支援するガザ人道財団(GHF)が運営する配給拠点付近の援助を求める人々に対し、依然として発砲を続けている。
飢餓で特に影響を受けるのは赤ちゃんたち
ガザ地区の病院の医療スタッフたちは、筋肉や脂肪組織がなく、骨の上に皮膚があるだけの重度の栄養失調の乳児を目にしていると、ナセル病院の小児科・産科部長アハメド・アル・ファラー氏はアルジャジーラ紙に語った。
アル・ファラー氏は、乳児、幼児、子どもは生後 3年間は中枢神経系が発達途上にあるため、栄養失調の長期的な影響は深刻であると述べた。
栄養失調の乳児は、中枢神経系の構成に不可欠な葉酸、ビタミンB1複合体、多価不飽和脂肪酸が不足する。
アル・ファラー氏は、栄養失調は将来の認知発達に影響を及ぼし、子どもの読み書きを困難にし、うつ病や不安につながる可能性があると述べた。
国境なき医師団の医師タニヤ・ハジ・ハッサン氏は、食糧が再び入手できるようになった後も深刻な健康リスクが残ると説明した。
「現実には、食糧が届いても問題は終わらないのです…栄養失調は体の機能のあらゆる側面に影響を及ぼします」とハッサン氏はアルジャジーラ紙に語った。
ハッサン氏は続けてこう述べた。
「体内のすべての細胞がこれ(栄養失調)によって変化します。腸では細胞が死滅します。その結果、吸収や細菌の増殖に問題が生じます。膵臓の機能が低下し、脂肪の吸収が困難になります。心臓細胞は弱くなり、薄くなってしまいます」
「心臓のつながりが損なわれ、心拍数も低下します。こうした子どもたちは、たとえ栄養補給されていても、心不全で亡くなることが多いのです」
「子どもたちはまた、生命を脅かす塩分の変化も起こしており、致命的な不整脈につながる可能性があります。敗血症やショックにもかかりやすいのです」
「患者は低血圧、皮膚損傷、低体温、体液過剰、感染症、ビタミン欠乏症などの症状に直面する可能性があります…これらは視力と骨に影響を及ぼす可能性があります」
