青く染まったチェルノブイリ立入禁止区域の犬。原因は不明

sott.net
遺伝子変異によって高放射能環境に適応した犬たち
1986年に発生したチェルノブイリの減力発電所の事故の後、この地域は、「チェルノブイリ立入禁止区域(CEZ)」として、基本的には人間は住めない場所として今に至っています。
しかし、人に飼われていた犬などのペットや、あるいは野生生物などはそのまま現地に残ることになったわけですが、チェルノブイリの犬たちに食糧や医療などを施している非営利団体「チェルノブイリの犬たち」という組織が、最近、
「チェルノブイリの犬たちの毛が青くなっている」
ことを報告しました。冒頭の写真です。
今回ご紹介する記事の話としては、そこから始まるのですが、記事を読んでいて、最も関心したのは以下の部分でした。
> 2024年の研究では、犬たちが突然変異を起こして新たな能力を発達させ、放射線、重金属、汚染物質に耐性を持つようになったことがわかった。
高い放射能レベルの中で、「その環境に適応するような遺伝子の変異」が起こり、そして、それがその後の世代にも引き継がれている中で、高い放射能レベルの中でも、健康と、繁殖能力を保持したまま、このチェルノブイリ地域で生き続けてきたようです。
In Deep の記事で、やはり原発事故があり、基本的に無人地帯となった福島で、
「以前より豊かな動物の生態系が広がっている」
ことをご紹介したことがありました。
・原発事故から10年の今、放射線で汚染された福島の無人地帯は、チェルノブイリ同様、「以前より豊かな動物の生態系が広がっている」ことが米国の科学者たちによる調査で判明
In Deep 2020年1月11日
ここでは、海外の、
「福島周辺の無人地帯では野生生物たちが大繁栄していた」
という記事と、
「放射能事故後にチェルノブイリで増加し続ける野生生物」
という報道をご紹介していますが、同じような遺伝子の変異が起きていたのかもしれません。
地球の生命は強いものだと思います。
それでも、世界的に野生生物はどんどん減っているというあたりに、現在の環境の相当な悪化を感じざるを得ないですが。
チェルノブイリで捨てられた犬たちが青くなるのを見て、飼い主たちは困惑している
Caretakers baffled as abandoned dogs in Chernobyl turn blue
sott.net 2025/10/27

チェルノブイリ原発事故現場に住み着いた犬の世話をする人たちが、青い毛の犬たちを発見した。被災地では初めてのことだ。
「チェルノブイリの犬たち (Dogs of Chernobyl)」と呼ばれるこの団体は、複数の犬の群れが映った動画を公開した。動画では、少なくとも 1匹は真っ青だった。
「先週は青くありませんでした。理由は分かりませんが、何が起こっているのかを突き止めるために捕獲しようと試みています」と、動画のキャプションに記されている。
「おそらく、何らかの化学物質を摂取しているのでしょう」
非営利団体クリーン・フューチャーズ・ファンドの関連団体であるこの団体は、青い毛色は恐ろしいとしながらも、犬たちは「とても活発で健康そう」だと付け加えた。
2017年以来、「チェルノブイリの犬たち」は、18平方マイルの立ち入り禁止区域内で暮らすおよそ 700匹の犬の世話をしてきた。同団体は毎年、犬たちに食料と医療を提供している。
これらの犬たちは、歴史上最も壊滅的な原子力事故の一つである 1986年のチェルノブイリ原子力災害の後、住民が避難した際に残されたペットの子孫だ。チームは青い毛の原因はまだわからないが、ソーシャルメディアユーザーからは、Instagram や TikTok に投稿された動画のコメント欄でいくつかの推測が寄せられている。
「あの青みがかった毛は化学物質による体外汚染の結果で、洗い流せる」と、あるTikTokユーザーは共有した。
別のユーザーはコメント欄に、「長い間汚染地域と接触していたにもかかわらず、これらの犬がまだ繁殖できるほど繁殖力があることに驚きだ」と投稿した。
これらの犬たちは健康そうに見えたが、科学者たちは災害以来、現場周辺に生息する動物たちを研究してきた。
1986年4月26日、チェルノブイリ原子力発電所の原子炉の一つが爆発したことから始まり、人類史上最大の放射性物質の環境への放出につながった。この悲劇的な出来事の後、住民たちは極度の放射線レベルを避けるため、チェルノブイリとその周辺地域から避難した。
それ以来、この地域はチェルノブイリ立入禁止区域(CEZ)として知られるようになった。
その後、人間の労働者の許容被曝量の 6倍にあたる 11.28ミリレムの放射線を含むチェルノブイリ立入禁止区域内で、野生生物が繁栄することができていることが確認された。
2024年の研究では、犬たちが突然変異を起こして新たな能力を発達させ、放射線、重金属、汚染物質に耐性を持つようになったことがわかった。
科学者たちはチェルノブイリ立入禁止区域(CEZ)に住む野良犬 116匹から血液サンプルを採取し、周辺地域の他の犬とは遺伝的に異なる 2つの異なる集団を発見した。
これは、犬たちがこの有毒な環境への長期曝露に耐えられるように適応してきたことを示唆しており、荒れ地で繁栄し続けてきた理由を説明できる。
コロンビア大学の環境衛生科学者であるノーマン・J・クライマン氏が率いる研究チームは、生息地を汚染または破壊する災害では、野生生物は悪影響のある環境変化への適応を強いられる可能性があるため、この過酷な環境での生活が犬の遺伝学にどのような影響を与えたかを調査してきた。
クライマン氏らは、チェルノブイリ原子力発電所周辺と 10マイル離れたチェルノブイリ市で人道的に捕獲された 116匹の「半野生」犬から血液サンプルを採取した。
これらのサンプルは、クリーン・フューチャーズ・ファンドの「チェルノブイリの犬たち」プログラムが 2018年と 2019年に実施した不妊手術とワクチン接種の際に採取された。
血液サンプルはその後、DNA 抽出と分析のために米国に輸送され、犬たちの固有の遺伝子構成が明らかになった。
「どういうわけか、2つの小さな犬の集団が、あの非常に毒性の高い環境で生き延びることができたのです」とクライマン氏は声明で述べた。
「これらの犬の個体群動態を分類することに加えて、複数の環境ハザードへの慢性的な曝露がこれらの集団にどのような影響を与えたかを理解するための第一歩を踏み出したのです」
彼と彼の同僚は、2023年3月に学術誌に論文を発表した。
具体的には、研究者たちは約 400カ所の「外れ値遺伝子座」、つまりゲノムの他の部分とは著しく異なる行動や変異パターンを示すゲノム上の部位を発見した。
そして、これらの外れ値遺伝子座に関連する 52個の遺伝子を特定し、「原子力発電所の環境汚染への曝露と関連している可能性がある」と研究は述べている。
汚染された環境は、犬の世代から世代へと受け継がれる遺伝子変異を引き起こし、最終的に過酷な環境への適応を促したと考えられる。