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農業で使用される除草剤ダクタールに対し、米国当局が「妊婦の胎児への重大な健康リスク」の懸念で使用停止の緊急命令を発令。40年ぶりの措置

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Agri Business Global




アメリカ環境保護庁 (EPA)が、ダクタールという農薬(除草剤)に対しての「使用停止の緊急命令」を発令したことが、EPA ウェブサイトのニュースリリースで告知されています。

ダクタールというのは、DCPA と表記されることが多いようで、EPA のニュースリリースには、

> 主にブロッコリー、芽キャベツ、キャベツ、タマネギなどの作物に使用される。

とありますが、日本では、どうも「稲作」に使用されるものでもあるようです。

世界大百科事典より

…酸アミド系除草剤としては,DCPAが代表的除草剤で,特異な選択性を示すことで知られている。すなわち,イネには無害であるがメヒシバ,ノビエなどイネ科雑草に効果を示し,広葉雑草に対しても殺草作用を有するので,田植直後の水田除草剤として使用される。

kotobank.jp

日本でどの程度使われているのかはわかりません。

今回のアメリカ環境保護庁の緊急使用停止命令の理由については、以下のようにあり、妊娠中の女性が暴露した場合、胎児が大きな影響を受ける可能性があるということだとあります。

EPA ニュースリリースより

EPA がこの措置を講じたのは、妊娠中の母親が DCPA に曝露した場合、胎児は曝露に気付かないまま、胎児甲状腺ホルモンレベルに変化を経験する可能性があり、こうした変化は一般に低出生体重、脳の発達障害、IQ の低下、後年の運動能力障害に関連し、その一部は不可逆的である可能性があるためである。

epa.gov

これは、あくまで「農業従事者としての農薬への暴露」のことであり、つまり農作業や収穫作業の中で、妊婦さんが DCPA に暴露した場合、このようなリスクがあり得るということのようです。

ただ、「散布した場合、周辺環境の人々も暴露する」可能性があることを EPA は書いています。なお、農作物としての食料そのものからの影響については言及されていません。

除草剤というのは、全般として、いろいろと問題のある場合も多いものが多いですが、農作に直接関係している除草剤に対しての緊急使用停止命令というのは、なかなか緊迫感のある話かもしれません。

そのニュースリリースをご紹介します。

わりと長いものです。





EPA、深刻な健康リスクに対処するため農薬ダクタルの使用停止の緊急命令を発令

EPA Issues Emergency Order to Stop Use of Pesticide Dacthal to Address Serious Health Risk
EPA 2024/08/06

本日 8月6日、アメリカ環境保護庁(EPA)は、連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法に基づく殺虫剤ジメチルテトラクロロテレフタル酸(DCPAまたはダクタール)の全登録を緊急停止すると発表しました。EPA がこのような緊急措置を講じるのは約 40年ぶりのことです。

EPA がこの措置を講じたのは、妊娠中の母親が DCPA に曝露した場合、胎児は曝露に気付かないまま、甲状腺ホルモンレベルに変化を経験する可能性があり、こうした変化は一般に低出生体重、脳の発達障害、IQ の低下、後年の運動能力障害に関連し、その一部は不可逆的である可能性があるためです

「 DCPA は非常に危険なので、直ちに市場から撤去する必要があります」と、 化学物質安全・汚染防止局のミハル・フリードホフ次官は述べています。

「人々を危険な化学物質への曝露から守るのが EPA の仕事です。今回の場合、曝露したことすら知らない妊婦が、一生取り返しのつかない健康問題を抱える赤ちゃんを産む可能性があります。そのため、EPA は 40年ぶりに緊急停止権限を使って農薬の使用を中止しました」

DCPA は、農業および非農業の両方の環境で雑草を防除するために登録されている農薬ですが、主にブロッコリー、芽キャベツ、キャベツ、タマネギなどの作物に使用されます。

本日の緊急命令を発令するかどうかを決定するにあたり、EPA は米国農務省と協議し、栽培者が DCPA およびこの農薬の代替品をどのように使用しているかを検討しました。

2013年、EPA は DCPA の唯一の製造元である AMVAC ケミカル・コーポレーション社にデータ呼び出し(DCI)を発行し、DCPA の既存の登録を裏付ける 20件以上の研究の提出を求めました。

要求されたデータには、成人および出生前後の発育中の幼児の甲状腺の発達と機能に対する DCPA の影響に関する包括的な研究が含まれ、2016年1月までに提出する必要がありました。

AMVAC社が 2013年から 2021年にかけて提出した研究のいくつかは DCI 対処するには不十分であると判断され、甲状腺の研究やその他の研究はまったく提出されませんでした。

2022年4月、EPA は、AMVAC社が甲状腺研究を含む必要なデータの完全なセットを 10年近く提出しなかったことを理由に、DCPA テクニカルグレード製品(最終用途製品の製造に使用)の登録を一時停止する意向通知を発行しました。これは非常にまれなことです。

AMVAC 社は 2022年8月に必要な甲状腺研究を提出しましたが、EPAは行政聴聞会の後、2023年8月22日に AMVAC 社が他の未提出のデータを提出し続けているという理由から登録を一時停止しました。

その後、2023年11月、AMVAC 社が十分なデータを提出したことを受けて、データ提出の一時停止は解除されました。 芝生での DCPA の使用のほとんどは 2023年12月に AMVAC 社によって自主的にキャンセルされましたが、他の用途の容認できないリスクは残っていました。

2023年5月、EPA は AMVAC 社が提出した甲状腺研究の分析に続き、DCPA を含む製品への職業上および住宅での曝露のリスクに関する評価を発表しました。この評価では、個人用保護具や工学的制御が使用されている場合でも、DCPA の使用と適用に関連する健康リスクが見つかりました。

最も深刻なリスクは、妊婦の胎児に対するものです。EPA は、DCPA 製品を取り扱う妊婦の一部は、EPA が胎児に安全であると推定している量の 4~ 20倍の曝露を受ける可能性があると推定しています。

また、DCPA がすでに散布されている場所に入る、またはそこで働く妊婦の胎児へのリスクも懸念されます(特に、移植、除草、収穫などの作業に携わる散布後の作業者)。

現在の製品ラベルには、散布後 12時間は散布された畑への立ち入りを制限しなければならないと記載されています。しかし、多くの作物や作業では、散布された畑の DCPA レベルは 25日以上安全でないレベルのままであるという証拠があります。

農薬散布による飛散(散布時または散布直後に空気中を移動し、意図した場所以外の場所に農薬が移動すること)も、DCPA が使用されている場所の近くに住む妊婦の胎児を危険にさらす可能性があります

EPA の 2023年の評価が発表されて以来、 AMVAC 社は 芝生での使用が登録されている DCPA 製品の取り消しを含む、DCPA 登録に対するいくつかの変更を提案してきました。

これらの取り消しにより、芝生の上やその周辺でのレクリエーション活動による DCPA への曝露は実質的に排除されます。しかし、EPA の分析によると、AMVAC 社が提案した DCPA の農業用途の変更は、DCPA を扱う人々やその周辺で働く人々の深刻な健康リスクに十分に対処していません。

2024年4月、EPA は、DCPA にさらされた妊婦の胎児への重大な健康リスクについて公に警告し、この農薬に関連する深刻な、場合によっては永久的で不可逆的な健康リスクに対処するための措置を講じる意向を示しました。

2024年3月27日付けの AMVAC 社宛の書簡で、EPA は同局が発見したリスクを改めて述べ、同局ができるだけ早く、農薬のキャンセルや緊急停止の要請を含む規制オプションを追求すると述べました。

重大なリスクが特定された場合、EPA は、連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法に基づいて農薬の一時停止または取り消しの措置を講じることができます。このような措置を講じるには、連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法の手続き要件もあって、多くのリソースと時間がかかります。

取り消し手続きには、少なくとも数か月(登録者が異議を唱えない場合)、場合によっては数年(登録者が異議を唱え、行政聴聞会とその後の取り消し命令に対する控訴が開始される)かかることがあります。

連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法ではまた、EPA 長官が差し迫った危険を防止するために必要であると判断した場合、取り消し手続きの進行中に農薬製品の一時停止を求めることも許可されています。

EPA のレーガン長官は、DCPA によってもたらされる重大かつ差し迫った危害のため、この即時発効の一時停止命令が必要であるという緊急事態が発生していると判断しました。EPAは、今後 90日以内に DCPA 製品を取り消す旨の通知を発行する予定です。

緊急命令は即時発効します。

EPA は、通常のキャンセル手続きにかかる期間中に DCPA 製品の販売と使用を継続すると、胎児に差し迫った危険が生じると判断しました。

AMVAC 社はこれらの懸念に対処しようとしましたが、EPA は DCPA の継続使用を可能にするために実施できる実際的な緩和策はないと判断しました。







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