食糧供給への攻撃が再び
アメリカ最大の食料品流通業者であるユナイテッド・ナチュラル・フーズ社(UNFI)という企業が、サイバー攻撃を受けて、すべての食料配給の停止にいたったという報道がなされています。
同社から供給を受けている食料小売り店は 3万店舗にもおよぶのだそうで、現在も完全な回復はしていないようです。
サイバー攻撃を行った「主体」が誰なのかは現時点ではまったくわかっていないようですが、このような「食料関連サービスを狙った攻撃」は、アメリカで、2022年頃に多発していました。
・偶発的な火災、破損あるいは殺処分等により操業停止となったアメリカの食品関連施設の数が「 100 」に達する
地球の記録 2022年6月29日
どれも、目的も実行者も不明なままですが、現在の不安定な状態にあるアメリカで、また食糧関係への攻撃が始まったのかもしれません。
食糧流通もまた、コンピューターとオンラインに依存しているわけで、ここが次々と攻撃されると、サプライチェーンに大きな影響が出てくるときもあるのかもしれません。
ユナイテッド・ナチュラル・フーズ社へのサイバー攻撃と、その影響についての記事です。
サイバー攻撃により北米最大の食料品販売業者が機能不全に陥り、サプライチェーンが脅かされる
Cyberattack cripples North America’s largest grocery distributor, threatening supply chain
naturalnews.com 2025/06/10
北米最大の食料品流通業者であり、ホールフーズ・マーケットの主要サプライヤーでもあるユナイテッド・ナチュラル・フーズ社(UNFI)が、深刻なサイバー攻撃を受け、配送を停止し、システムをオフラインにせざるを得なくなった。
6月初旬に発覚したこの攻撃により、3万店舗に及ぶ同社の小売ネットワーク全体の業務が混乱に陥り、米国の食品サプライチェーンがデジタル脅威に対して脆弱であるという懸念が高まっている。
ロードアイランド州に拠点を置く同社は、6月9日付の規制当局への提出書類で、IT システムへの不正アクセスにより、重要インフラの停止を含む緊急プロトコルが発動されたことを確認した。
UNFI は、「このインシデントにより、当社の事業運営に一時的な混乱が生じており、今後も(混乱は)継続する見込みです」と述べ、機能復旧に向けてサイバーセキュリティの専門家と協力していると付け加えた。
サプライチェーンの麻痺
UNFI の供給停止により、食料品小売業者は苦境に立たされている。
ニューヨークのモートン・ウィリアムズ・チェーンの営業部長、スティーブ・シュワルツ氏はニューヨーク・ポスト紙に対し、「受注も発注もゼロとなり、業務が停止状態に陥っている」と語った。
同チェーンは乳製品やボトル入り飲料水といった日用品を UNFI に依存しており、代替の供給元を探さざるを得ない状況にある。UNFI の供給に依存しているパン屋などの小規模事業者は、さらに厳しい状況に直面している。
アマゾン傘下のホールフーズは、影響の全容を明らかにしていないものの、「できるだけ早く棚の在庫を補充する」努力を認めている。
UNFI の従業員は匿名でオンラインに投稿し、経営陣から明確な説明がほとんどなかったと指摘した。「本社は何も教えてくれない」
重要インフラへの広範な脅威
この攻撃は、トランプ政権が米国のインフラを標的とした外国のサイバー脅威について警告を強めている時期と重なる。
最近の情報機関による評価では、中国共産党が「最も活発かつ執拗なサイバー脅威」であり、地政学的危機の際に民間ネットワークを混乱させる能力があると指摘されている。
UNFI は今回の侵害を特定の主体によるものとは特定していないものの、この事件は食品業界が妨害行為に対して脆弱であることを浮き彫りにしている。
一時的な解決策、長期的なリスク
UNFI は顧客への影響を軽減するために「一時的な回避策」を講じたと主張しているが、完全復旧の時期は依然として不透明だ。
この発表後、同社の株価は投資家の不安を反映して 8.5%下落した。
今回の侵害は、サイバーインシデント発生後、ウェブサイトが数日間ダウンしたビクトリアズ・シークレットなどの小売業者に対する最近の攻撃を彷彿とさせるものだ。
こうした出来事は、デジタル戦争が日常の商取引に及ぼす波及効果を露呈している。2024年にホールフーズと 8年間の流通契約を締結した UNFI にとって、今回の侵害はオーガニック食品・自然食品小売業者の生命線を守る能力を試すものとなる。
UNFI へのサイバー攻撃は、物流上の頭痛の種にとどまらない。悪意ある者がいかに容易に必要不可欠なサービスを不安定化させられるかを改めて認識させるものだ。
同社が事業復旧に奔走する中、今回の事件は政策立案者や企業に対し、容赦ないデジタル脅威の時代に備えてサプライチェーンを強化するよう促す契機となるはずだ。
今のところ、空になった食料品店の棚は、炭鉱のカナリアのような役割を果たしている。問題は、新たな攻撃が来るかどうかではなく、米国の食品業界が、その時に対しての備えができているかどうかだ。