先日、「1990年から 2019年までの 204か国における自閉症スペクトラム障害の発生率」というタイトルの論文の存在を知りました。
2022年に発表されたものですが、204カ国分という多くの国の自閉症スペクトラム障害の発生率の統計が示されたのは、これが初めてではないでしょうか。
論文にはマップがあり、自閉症スペクトラム障害の有病率の各国比較(人口10万人あたり)が示されています。以下のマップです。
世界の自閉症スペクトラム障害の有病率
researchgate.net
このマップから「有病率の極めて高い国」を挙げますと、以下のようになります。
なお、色分けは赤ければ赤いほど高く、青が濃いほど低いということになっています。
高いほうは、
■ 600人以上 (10万人中)
■ 500 - 600人
となり、低いほうは、
■ 250 - 300人
■ 250人以下
となります。
このマップを見ていますと、アメリカやカナダ、そして、日本やヨーロッパの一部がいかに異様な状況となっているかがわかります。
アメリカに関しては、CDC が「36人に1人が自閉症」と発表していたり、スウェーデンでは、女子の自閉症の数が驚異的に増加していることが報じられたりもされています。
なお、これは「 2019年までのデータ」です。それ以降は含まれていません。
2020年 あるいは 2021年以降、この分布がどのようになっているのか……とは思います。
2024年1月には、「妊娠中のワクチン接種後に生まれる自閉症的行動を示す新生児に関する研究」という論文が発表されていました。以下の記事でご紹介しています。
・妊娠中のワクチン接種後に生まれる自閉症的行動を示す新生児に関する研究。その原因である「海馬と小脳の神経細胞の破壊」の影響は、大人にも適用されるはず
In Deep 2024年1月14日
あるいは、「幼児期に複数回のワクチン接種を受けた子どもは神経発達障害のリスクが非常に高くなる」という米国の論文もこちらの記事でご紹介したことがあります。
これらのことからも、今後も神経発達障害を持つ子どもたちの割合はさらに増えていくことが予想されます。
ここから、先ほどのマップが示されていた論文の概要です。
1990年から2019年までの204か国における自閉症スペクトラム障害の発生率、有病率、世界的な負担
Incidence, prevalence, and global burden of autism spectrum disorder from 1990 to 2019 across 204 countries
researchgate.net 2022/06
概要
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、精神疾患の負担に大きく寄与している。ASD の認識の向上と診断基準の変更は、ASD の診断率に影響を与えた可能性がある。
しかし、一部の国における診断率の傾向に関するデータは公表されているものの、世界レベルでの診断率の傾向と ASD 関連障害に関する最新の推定値は不足している。
ここでは、このギャップを埋めるために、世界疾病・傷害・危険因子負担研究のデータを使用し、世界中の ASD の有病率、発生率、障害調整生存年(DALY)の変化に焦点を当てた。
1990年から 2019年まで、全体的な年齢標準化推定値は世界的に安定していた。有病率と DALY はともに社会人口統計指数の高い国で増加した。しかし、社会人口統計指数の低い国では年齢標準化発生率が減少しており、認識を向上させる必要があることを示している。
男女比は 1990年から 2019年の間に減少したが、これはおそらく女性の ASD に対する臨床的関心が高まったことによるものと考えられる。
私たちの研究結果は、社会人口統計指数の低い国での ASD 検出は最適とは言えず、社会人口統計指数が高いい国では ASD の有病率の上昇を考慮して ASD の予防/治療を改善する必要があることを示唆している。
さらに、これまで ASD の疫学研究や臨床研究から取り残されてきた可能性のある女性の ASD 診断にもますます注目が集まっている。