
緻密に計算されたジェノサイド・プログラム
イスラエルによる「ほぼ計画的なガザの飢餓作戦」がさらに進行していまして、日々、特に子どもたちが多く飢餓により死亡しています。
これまで、100人以上の人が飢餓により死亡したと報告されていますが、そのうち 子どもが 80人だと報じられています。
これは単に飢餓による栄養失調だけではなく、特に子ども場合、極端な栄養不足は、さまざまな病気や感染症の影響を受けやすくなります。そういう意味では、実際の飢餓による犠牲者はもっと多いと思われます。
ガザに関しては、5月の終わりに国連が「ガザの230万人全員が壊滅的な飢餓の危機に瀕している」と発表しましたが、その後、国連からの報告がないのは、
「国連職員による調査ができない」
ためです。
国連は、調査の上で正式に「飢餓を宣言」するのですが、ガザの調査が事実上不可能になっているため、いろいろなことがはっきりとはわからないままです。
そんな中、アメリカのタフツ大学の飢餓の専門家が、「今のままでは、子どもたちの命が次々と奪われてしまう」と中東のミドル・イースト・アイ通信に語ったことが記事となっています。
イスラエルはいまだに援助物資の搬入を阻止していますが、この状態が続くと、ある時点から(限界に達したときから)飢餓による死者数は、指数関数的に増えてしまいます。
特に子どもたちがもたない。
つまり、「若いパレスチナ人の芽を摘む」というイスラエルの思惑通りのジェノサイドが完遂してしまう可能性があるということになってしまいます。
現状に対して国際社会は無力であることがこの数ヶ月で示されています。各国の指導者は口ではいろいろと言いますけれど、実質的な取り組みはまったく行われてはいません。
現代史では見たことのない計画的なジェノサイドが、誰からも邪魔されることなく進行しています。
中東のミドル・イースト・アイ通信の報道です。
ガザの「大量虐殺的飢餓」により子どもたちが急速に死ぬだろうと、トップの飢餓専門家が警告
Children will die quickly amid 'genocidal starvation' in Gaza, warns top famine expert
middleeasteye.net 2025/07/23

7月23日、ガザの慈善キッチンから食料を受け取るのを待つパレスチナの子ども。
著名な飢餓の専門家であるアレックス・デ・ヴァール教授は、イスラエルがガザ地区に対する致命的な包囲を続けていることで、同地区のパレスチナ人を「大量虐殺的な飢餓」に陥れていると非難した。
パレスチナ保健省によると、イスラエルが 3月に封鎖を再開して以来、 80人の子どもを含む少なくとも 101人のパレスチナ人が飢餓で死亡しており、月曜日 (7月21日)には 15人が栄養失調で死亡した。
一方、物議を醸しているガザ人道財団が 5月から運営し、イスラエル軍と米国の警備請負業者が配置された配給所で援助を求めていたパレスチナ人 1,000人以上が殺害されている。
デ・ヴァール氏は火曜日ミドル・イースト・アイ紙の生放送番組で、イスラエルが飢餓の程度を測るための人道支援員や調査員のアクセスを妨害しているため、国連は飢餓を宣言する立場にないと語った。
しかし、同氏は「飢饉を起こす場合、重要な情報へのアクセスを遮断し、誰も飢饉を宣言していないと言うのは、実際には比較的簡単だ」と述べた。
「飢饉の隠蔽は、それを実行する者たちの手段だ」と彼は付け加えた。
デ・ヴァール氏は、ガザにおける飢饉は「完全に予測されていた形」で進行していると述べた。
デ・ヴァール氏は、米タフツ大学フレッチャー国際問題大学院に所属する世界平和財団の事務局長であり、『大量飢餓:飢餓の歴史と未来』の著者でもある。
健康な成人が飢餓で死亡するには、完全に食事を摂らない状態で 60日から 80日かかると氏は説明した。半飢餓状態だと、さらに長くかかるだろう。
「しかし、子どもたちの場合はもっと早く死んでしまう。小さな体はあっという間に衰弱していくのだ」
子どもたちをより脆弱にしているのは、栄養失調と感染症の相互作用だ。
「多くの子どもたちが下痢性感染症や栄養失調に陥り、食べ物を適切に消化・処理できなくなる。そして、それに続く脱水症状、そして栄養失調と病気の複合的な影響によって、多くの子どもたちが命を落としてしまう」
そのため、デ・ヴァール氏は、飢餓による死亡者数は飢饉に関連する死亡者数全体と比較すると過小評価されている可能性があると指摘した。
飢餓状態の人の体は、まず自身の脂肪を消費し、次に自身の臓器を消費する、と彼は説明した。精神的には、飢餓は幻覚や偏執症を引き起こす可能性がある。
「人工的な飢餓」
デ・ヴァール氏は、ガザにおけるイスラエルの行動は、歴史上他の飢餓状況と比べて際立っていると述べた。
「イスラエルの行動が際立っているのは、これほど細かく精密に仕組まれた飢餓を起こさせた例は近代史で他に例がないからだ」と彼はミドル・イースト・アイ紙に語った。
「もしイスラエルがガザ地区の子どもたち全員に明日朝食を食べさせたいと思うのなら、(イスラエルの)ネタニヤフ首相がそう言えば、それはすぐに実現できることなのだ」
「今日のスーダンのような、他の恐ろしい飢饉ではそうではない。イスラエルがこれほど緻密かつ正確に制御しているのは、現代において前例のないことだ」
ガザ地区最大の人道支援機関である国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA)の関係者はミドル・イースト・アイ紙に対し、4か月半にわたり食糧や医薬品を積んだトラック 6,000台をエジプトとヨルダンに輸送しているが、イスラエルはまだ入国を許可していないと語った。
UNRWA のフィリップ・ラザリーニ事務局長は 5月、今回の包囲以前、援助団体は 1日あたり約 600台のトラックを運び込むことができたと語った。これは、人道支援団体がガザの住民に必要とされる最低限の援助量としている量だ 。
UNRWA の広報部長ジュリット・トゥーマ氏は火曜日、ミドル・イースト・アイ紙に対し、UNRWA 職員を含むパレスチナ人から、自分たちや子どもたちのために食料を切望する「SOSメッセージ」が届いていると語った。職員の中には、勤務中に空腹で気絶した人もいるとトゥーマ氏は語った。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ガラント元国防相は、ガザ地区で飢餓を戦争の武器として利用したことに関連する戦争犯罪および人道に対する罪で、ハーグの国際刑事裁判所に指名手配されている。
国連の主要な司法機関である国際司法裁判所は、2024年3月28日にイスラエルに対し、国連と協力してガザへの人道支援が支障なく提供されるよう必要なあらゆる措置を取るよう命じる拘束力のある命令を出した。
しかしイスラエルはこの命令をほぼ無視している。
デ・ヴァール氏は、同裁判所のイスラエル人判事アハロン・バラク氏もこの命令に賛成票を投じ、全員一致で賛成したと指摘した。
国際司法裁判所はまた、イスラエルが人道援助の提供を確実に行う義務は、ジェノサイド防止条約に基づく義務の一部であると判断した。
しかし、国際司法裁判所の判決から 16か月が経過したが、イスラエルとその国際パートナーはこの義務を果たしていないとデ・ヴァール氏は述べた。
「ジェノサイド条約には、ジェノサイドを防止し、処罰する義務がある。なので、これ以上、子どもたちが飢餓で死亡するまで、予防の取り組みを待つことはできないのだ」
「私たちが今見ているのは、まさに大量虐殺的な飢餓そのものだ」
「個人の苦しみや死だけでなく、おそらくもっと重要なのは、社会的なトラウマだ。それは恥辱であり、屈辱だ。人々が動物の状態に貶められ、ゴミの山から食べ物をあさるなど、根深い社会的タブーを犯さざるを得ないという感覚だ。これが、現在のジェノサイドの姿なのだ」