若者ばかりが心臓疾患を発症するという異常な時代が世界各地で
2020年あるいは 2021年以降、世界中で、「心臓発作を発症する年齢層が、どんどん若くなっている」ことが報告されています。
最近、インドのインディアン・エクスプレス紙が、複数の医師や病院の報告として、「インドでの心臓発作の症例の 50%が 40%未満」だと報じていました。
つまり、心臓発作の患者の「半数が若者」という異常な事態となっているのです。
これは、インドだけの問題ではなく、世界的な事案となっています。
以前、以下の記事で、アメリカでの心臓発作の年齢層が 2021年以来、非常に若い年齢層に集中していることをご紹介しました。
・「超健康な若者たちの心臓発作が驚くほど増加している原因は何なのか」という報道への答えを探しましょう
In Deep 2024年10月14日
以下は、2019年から 2023年までのアメリカの 18歳から 44歳の心臓発作の患者率の推移です。
米国の18歳- 44歳の心臓発作の推移
dailymail.co.uk
あるいは、以下は、ノルウェーの「心臓血管薬を使用している 15歳から 44歳の人数」の推移です。
心臓血管薬を使用している15歳〜44歳の2013年からの推移
BDW
オーストラリアでは、「あまりの心臓突然死の多さに、心臓突然死の記録簿を作る」ことが進められています。
どうやら、世界中で異様な状況となっているようなのですが、その原因については、今回ご紹介する報道では、
> 座りがちな生活、ストレス、不健康な食事、喫煙、アルコール摂取、さらには遺伝的要因…
などとしていますけれど、確かにこれは一般論でいうところの心臓疾患への影響ではあるかもしれないですが、
「 2020年以降、急激に心臓発作が増えたことの理由にはなっていない」
ということは確かです。
ゆっくり増え続けていたのならともかく、先ほどのアメリカのグラフのように「 2021年からいきなり増えた」わけです。
理由について、ここで書くのは野暮でしょうから書かないですが、明確な理由があると見られます。
そして、その理由であるならば、今後も心臓疾患は増加し続けることになると見られます。
インディアン・エクスプレス紙の報道です。
2020年以降、心臓発作の症例の50%が40歳未満の成人で発生
50% of heart attack cases since 2020 among adults below 40
Indian Express 2025/02/25
ラフル・スリヴァスタヴァ氏は、30代前半に仕事の絶頂期にあった。
締め切りや深夜の仕事の電話、忙しい生活と両立していたが、ある晩、突然胸に押しつぶされるような痛みがすべてを一変させた。
病院に駆け込んだ彼は、心臓発作を起こしていたと知りショックを受けた。かつては高齢者の病気と考えられていた心停止は、今では驚くほど頻繁に若者を襲っている。
デリーにある PSRI 病院の心臓病学の上級コンサルタントであるラビ・プラカシュ博士は、2020年から 2023年にかけてインド全土の病院から得られたデータによると、心臓発作患者の 50%が 40歳未満であることが示されていると述べた。
医師や研究者たちは、40歳未満の人々の心停止の増加に警戒している。専門家は、この増加の原因を、座りがちな生活、ストレス、不健康な食事、喫煙、アルコール摂取、さらには遺伝的要因に帰している。
プラカシュ博士は、状況の緊急性を強調し、「心臓発作はかつて高齢者の病気でしたが、ここ 4〜 5年で若年成人の症例が大幅に増加しています」と述べた。
デリーのアーカシュ・ヘルスケアによる 5年間の研究によると、COVID のパンデミック後、心臓発作の症例が 2倍以上に増加し、緊急症例は 60%増加した。この研究では、パンデミック前、パンデミック中、パンデミック後の3つの異なる期間(それぞれ22か月間)にわたって 762件の症例を分析した。
アーカシュ・ヘルスケアの心臓病部門長のアシシュ・アガルワル医師は以下のように述べた。
「 10年前、心臓発作は 50代後半から 60代前半の人に多く見られました。インド人の遺伝子構成が独特なため、発症が西洋諸国より 10年早かったのです。しかし現在、傾向は驚くほど変化しており、30代という若さで致命的な心臓発作に見舞われる人もいます。これは深刻な懸念事項です」
しかし専門家は、若者の突然死のすべてが心臓発作によるものではないと警告している。突然心臓死(SCD)は、動脈の閉塞ではなく、心室細動(不整脈)によって引き起こされることが多い。
突然の心臓死や突然の心停止は、基本的に複数の要因が絡み合っている。突然の心停止の原因は、冠動脈疾患、心筋症、心室細動、または弁膜損傷などだ。
MGM ヘルスケアの介入心臓学の上級コンサルタントであるジョティルマヤ・ダッシュ医師は次のように述べる。
「患者が心臓発作を起こすと、LAD 動脈 (心臓の前面を走る冠動脈の枝)が主に危険にさらされます。患者は心原性ショックに陥り、突然の心停止を起こすこともあります。直ちに行うべき治療は、適切な CPR を施して患者を蘇生させ、近くの病院に搬送することです」
「スポーツやジムでのトレーニング、ダンスイベントの最中に倒れる若者を私たちは見ています。これらは、一般的な心臓発作ではなく、不整脈が原因であることが多いのです」
なぜ突然急増したのだろうか?
インドや他の東南アジア諸国では、早期心臓病になりやすい遺伝的素因があるが、ライフスタイルの変化によりリスクは悪化している。
プラカシュ博士は以下のように述べた。
「ここ数年で、ライフスタイルの習慣は劇的に変化しました。喫煙は学校に通う子供、特に女の子の間でも一般的です。加工食品や精製食品を多く含む不健康な食生活、肥満の増加、塩分や糖分の過剰摂取、ストレスの増加、睡眠不足などが、すべて原因となっています」
長時間労働、雇用の不安定さ、ワークライフバランスの悪さなどの要因が、国内の働く専門家の間で心血管疾患や心停止の増加に大きく影響しているという。
最近の研究では、仕事のストレスが高かったり、ストレスに長時間さらされたりすると、高血圧、糖尿病、心臓病などの深刻な健康上の合併症を引き起こす可能性があることがわかっている。
COVID との関連
国立衛生研究所の研究によると、COVID に感染した人、特に重症の人は心臓疾患のリスクが著しく高いことが判明した。
医学誌に掲載された国立衛生研究所の研究は、約 21万8千人を 3年間追跡調査したもので、COVID 感染者は感染したことのない人に比べて心臓発作、脳卒中、死亡のリスクが 2倍高いことがわかった。COVID で入院した人の場合、リスクは 4倍高かった。
今後の道
パトナイク博士は、働く専門家たちの間でも増加している心血管疾患の負担に対処するために、ストレス管理、健康診断、意識向上、政策改革など、多面的なアプローチを提案した。
政府は、過度の労働時間を減らし、雇用の安定性を高め、より健康的な職場環境を促進するためのより厳しい政策を実施する必要がある、と同博士は述べた。