
ロシアに攻撃されたウクライナ・ブチャ地区の壊滅的な被害を見つめる男性。KyivPost
エネルギーと食品流通網をターゲットにした消耗戦
ロシアとウクライナの戦争は、「お互いのエネルギーインフラや、商品や食品のサプライチェーンを狙った経済的な消耗戦」に突入していますが、この数日間、ロシア軍は、ウクライナの店舗に商品を供給する倉庫を攻撃し続けており、その結果、
「ウクライナの食品物流の 90%が破壊された」
と、ウクライナ農業大臣自身が発表する事態となっています。
記事によると、これにより、
「キエフの店舗では、農産物、乳製品、主食の棚が空になっていると報告されている」
とありますように、たちまち物流不足が発生しているようです。
しかし、ウクライナ国内に食料そのものがないわけではないのです。少し前の「ロシアの黒海の港湾への攻撃によりウクライナの穀物輸出が停止状態に」という記事で取りあげましたように、ウクライナでは、黒海の港が破壊されるにつれて、農家の人々が作物を輸出することができなくなっている状態で、ウクライナの農作物貯蔵庫に小麦などの作物が積み上がり続けています。
つまり、「ウクライナ国内に食料はいくらでもあるのに、それを流通させる手段が途絶えた」ということになります。
これは、ロシアもおおむね同じで、黒海経由の農作物輸出に関しては、ロシアもほぼ何もできない状態となっていると見られる上に、ロシアも度重なるエネルギー施設への攻撃を受けており、極端な燃料不足(ガソリンやディーゼルなど)に陥っています。
現在のような応酬が続いた場合、国内の流通網が幅広いロシアはともかくとして、ウクライナで、
「食べ物が豊富にある中での飢饉が発生する」
という可能性さえあります(今年のウクライナの小麦は豊作でした)。
最近の In Deep で、世界の小麦の流通に関しての懸念を記事にしたことがあります。
食料供給警報:小麦の価格高騰と供給不足が避けられない理由
In Deep 2026年8月24日
ロシアとウクライナからの輸出が完全に途絶えた場合、世界に供給される小麦の約 3分の1などが消えるわけですので、影響は大きいと見られます。
このロシアとウクライナの経済戦争、あるいは互いに勝ち目のない消耗戦が続く限り、これは両国だけの問題ではなく、世界に影響が波及していくことは避けられないはずです。
報道をご紹介します。
ロシアが住宅地の隣のキエフの弾薬庫を攻撃。ウクライナは小売食品物流の90%が破壊されたことを認める
Russia Hits Kiev Ammo Dump Next To Homes; Ukraine Admits 90% Of Retail Food Logistics Wrecked
zerohedge.com 2026/08/30
金曜日(8月30日)の夕方、ロシアのドローンがキエフのすぐ西にあるミラ村のウクライナ国防軍の弾薬庫を攻撃した。
その結果発生した火災と数時間にわたる二次爆発により、 少なくとも 37人が死亡、数十人が負傷し、約 50棟の住宅と高齢者・障害者向け介護施設が被害を受け、数百人が避難を余儀なくされた。犠牲者の中には、救援に駆けつけた地元コミュニティの代表も含まれていた。
これに対し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、民間人の居住地の近くに武器庫を設置したことは「とんでもない過失」だと述べた。
大統領によると、最初の攻撃は砲弾、地雷、その他の弾薬、ドローンを保管していた倉庫を直撃したが、それらは「絶対にそこにあるべきではなかった」という。
一方、キエフの検察当局は、民間人の居住地の近くに爆発物を保管することの合法性について刑事捜査を開始した。これは 2か月で 2度目の同様の事件となる。7月に近郊のヴィシュネヴェにある倉庫が攻撃された際にも同様の二次爆発が発生し、死者が出、後に国営防衛企業の幹部が拘束された。

2026年8月29日 ロシアに攻撃された後のブチャ地区の壊滅的な光景。
ロシア国防省は、ミラ基地には長距離ドローン用の部品と発射ブースターが保管されていたと発表した。
また、キエフ州のフラミンゴ巡航ミサイル関連施設と、ミコライウ港およびイズマイール港への攻撃も行ったと主張した。ソーシャルメディア上でパトリオットミサイルが同基地に保管されていたとの主張は、ウクライナ政府の公式発表では確認されていない。
金曜夜の爆発は、ロシアが数日間にわたってジェット推進ドローンとミサイルによる攻撃を続け、キエフ上空でほぼ絶え間なく空襲警報を発令し、スーパーマーケットチェーン、郵便事業者、小売業者、物流会社の倉庫を攻撃している最中に発生した。
ウクライナのタラス・ヴィソツキー農業相は記者団に対し、「大まかに言って」、大手小売チェーン(ネットワークにサービスを提供する大規模な配送センター)が使用する食料物流インフラの約 90%が破壊されたと述べた。とはいえ、ヴィソツキー氏は 、チェーン店がより高価な生産者からの「移動式」配送に切り替えているため、飢饉にはつながらないと主張している。しかし、キエフの店舗では、農産物、乳製品、主食の棚が空になっていると報告されている。
ザポリージャで最後に営業していたエピセントル・ハイパーマーケットも、 ミラでの爆発の数時間前の金曜日の朝に襲撃された。
ロシアとウクライナの両国は互いの物流施設や軍民両用商業インフラを組織的に攻撃している。
ウクライナはロシアの製油所、エネルギー施設、オンライン小売業者の倉庫を標的にし、ロシアはウクライナの商店に商品を供給する倉庫を攻撃することで応酬している。
ウクライナの防空能力は、弾道ミサイルを確実に迎撃できる唯一のシステムであるパトリオット迎撃ミサイルの不足という周知の事実によって依然として制約を受けている。ジェット推進ドローンが新たな圧力を加えている。
ゼレンスキー政権は、ロシアに交渉を迫る手段として、自らの長距離攻撃を正当化してきた。
その直接的な結果は、キエフ郊外で明らかだ。民間人のすぐそばで、またしても不適切な場所に置かれた弾薬庫が爆発し、ウクライナの大臣自身が言うように、小売物流網は 90%が壊滅状態にあり、冬が近づいている。住宅のすぐそばに爆発物を保管することを誰が決めたのかという調査は、事態の一端を明らかにするだろう。空っぽの棚と鳴り響くサイレンが、残りの真実を物語るだろう。

