原因は不明ながら急速な増光と色の変化を見せる
いろいろな話題を振りまき続ける、太陽系外から来た星間物体 3I/アトラスですが、今度は、
・従来の彗星では考えられない急激な増光
と
・色が青く輝きだした
というふたつのことが報じられています。
このことが説明されているプレプリント論文「近日点通過を前に 3I/ATLAS が急激に増光」は、こちらにあります。
色に関しては、先日までの観測では、以下のような色でした。
10月14日頃の3I/アトラス
Elena Sabbi, Brian Lemaux 他
これが、太陽に最も近づいた場所（近日点）を通過した 10月29日には、以下のような青色として観測されたのです。
10月29日の3I/アトラス
ESA/TGO/CaSSIS
急速に増光した理由や、色が青く変化した理由はわかっていませんが、とにかく日々、いろいろな変化を見せてくれる彗星です。
今は 3I/アトラスは太陽の裏に位置するので、地球からは観測できませんが、11月になると、また地球からでも観測ができるようになります。
この増光と色の変化についての科学メディアの記事をご紹介します。
星間彗星3I/ATLASの青い輝きが天文学者を驚かせている
Interstellar Comet 3I/ATLAS's Blue Shine Is Surprising Astronomers
sciencealert.com 2025/11/03
太陽系外から来た彗星としては 3番目であることが知られている 3I/ATLAS彗星は、近日点（太陽に最も近づく点）に近づくにつれ、予想よりもはるかに急速に明るくなっている。
地球から見ると、この彗星はここ 1ヶ月間、ほぼ太陽の真後ろに位置しているため、この重要な時期に地上からの観測はほぼ不可能だ。その代わりに、天文学者たちは宇宙空間にある天文台から観測を続けている。
意外な観測者として太陽監視衛星が登場した。
ローウェル天文台の研究者チチェン・チャン氏と米海軍研究所のカール・バタムズ氏は、太陽のコロナを観測するために設計された宇宙船が、太陽と合に近づく彗星も追跡できると気づいた。
彼らは、STEREO-A、SOHO、GOES-19 （すべて太陽観測衛星）に搭載された機器を使用して、彗星の劇的な変化を捉えた。
太陽電池パネル展開中のSTEREO観測衛星
彼らの発見は衝撃的だった。9月中旬から 10月下旬にかけて、3I/ATLASが約 2天文単位（地球から太陽までの距離の約 2倍）から、わずか 1.36天文単位まで近づくにつれ、その明るさは劇的に増加したのだ。
研究チームは、彗星の明るさは太陽からの距離の逆数の 7.5乗に比例して増加していると計算した。これは、彗星がもっと遠くにあったときに観測された以前の増加率よりも大幅に急激な増加だ。
簡単に説明すると、ほとんどの彗星は太陽に近づき、氷がガスに変化するにつれて徐々に明るくなる。しかし、この恒星間訪問者 3I/ATLAS は通常の約 2倍の速度で明るくなっており、その表面に何か異常なことが起こっていることを示唆している。
観測により、彗星は太陽光よりも明らかに青く見えることも明らかになった。これは、彗星の目に見える明るさに、塵だけでなくガスが大きく寄与していることを示す明確な兆候だ。
以前の観測では、彗星の塵は赤みがかっていることが分かっていたため、今回の青方偏移は特に注目に値する。研究者たちは、この異常な色はシアンやおそらくアンモニアといった分子からの放射によるものだと推測している。
観測衛星 GOES-19 のコロナグラフ画像により、この彗星は、約 4分角にわたって広がる可視大気、すなわちコマを持つ、伸びた天体として捉えられた。核を取り囲むガスと塵のこの輝く外層は、太陽熱の強まりに伴い、3I/ATLAS が活発に物質を放出していることを裏付けている。
彗星は 10月29日に近日点に到達し、研究チームの計算によれば、明るさが 9等級ほどまで増光し、小型のアマチュア用望遠鏡でも観測できるほど明るくなった可能性があるという。
11月と 12月には太陽の背後から現れて暗い空に戻ってくるので、地上の観測者はついにこの驚くべき星間来訪者を詳細に研究する機会を得ることになるだろう。
このような急速な増光の原因は未だに不明だ。
研究者たちは、この彗星の異常な行動は、彗星の構成、急速な接近速度、あるいは星間空間での長い旅の間に獲得した特異性に起因するのではないかと推測している。